-- 情報収集 〜 コンタクト利用法 〜 礼儀作法技能 -- セッションが始まって、ビズを請け負ったとします。初めての人はたいていここで 迷います。「情報収集ってどうやったらいいんだろう」。まだ人間関係の殺伐とし ていないライトファンタジーな世界や、コンピュータゲームの世界ですと、いきあ たりばったりに、そこらへんの人に話しかけると色々喋ってくれるんですが、現実 を見てもそうだと思いますけど、いきなりそこらへん歩いてる人に話しかけても、 下手するとヘンなものでも見たような顔をして歩き去られてしまいますよね。 よくあるパターンということで、「どこぞの企業のミスター・ジョンソン」からの ビズだとしましょう。内容は「別のとある企業(の研究所/関連企業の工場等々) からブツ(データチップ/試作品/研究者等々)を奪ってきて欲しい」というもの だったと。 # 通常、企業からの依頼によるビズの最初は、100%とは言いませんが、どこからの # 依頼かわからないまま始めることが多いです。情報を集めていくうちに依頼主の # 正体がつかめることもありますし、最後までわからないまま、その後のニュース # で「あぁ、こういうことだったのか」になることもあります。それすらわからず、 # ただいつのまにか、とある会社が別の会社の系列に組み込まれていたりなんてこ # とも(で、PCにはそれが自分のやったことの結果なのだということすら判然と # しない、と)。 「コンタクトを使う」。はい、正しい答えです。 ターゲットになる企業にコンタクトが居る場合、一発キャラだと何食わぬ顔で「ビ ズだ」と悟られないように情報 -- 例えばセキュリティの交代時間 -- を聞き出し てしまうというのもアリかも。プレイヤーの技量が問われるやりとりになるでしょ う。ビズの後、そのコンタクトが、PCとの会話を自分のところの被害と結びつけ て考えるかどうか、それはわかりません。結びつけたとして、それを漏らしてしまっ たのは本人ですから口をつぐんでいるかもしれないし、カンパニーマンのようなセ キュリティ部門にいるヤツだと、もしかするとPCが犯人だと断定して追撃の手を 伸ばしてくるかもしれません。以降コンタクトとして使えないかもしれませんが、 そこは一発キャラですから……(笑) が、たいていの場合、そう都合よくコンタクトが居ることは少ないですし、継続し て使いたいPCだと、コンタクトが減ってしまうのも辛いですね。 そんななかで、もっとも便利なコンタクトといえばフィクサーでしょう。フィクサー は裏の世界の世話人ですから、ビズの途中でサイドビジネスをして得たペイデータ を売りはらったり、入手したブツやチップを捌くのには必須です。ちなみに、武器 の訪問販売&宅配をしてくれるようなフィクサーは居ないと思ったほうが懸命です。 「調達」そのものはしてくれますが。ほかに、「(その情報にアクセスできそうな) 別のランナーを紹介してもらう」という使い方をすることもあります。 もちろん、シナリオ導入のためのフィクサーもいるわけですが、仕事の依頼人が情 報をかくしていたり、報酬をケチったり、裏切ったりすることはよくあることです。 そんな場合のウラをとるには自前の情報源がかかせません。 # 裏を取るというのもある程度重要ですが、ロングショットで撮った場合に、「使 # い捨てにされるランナー」というのも荒んだ世界のパンクな雰囲気のなかに違和 # 感無くとけ込んで、それはそれで好きです。或いは「利用したいんならさせてや # れ、そのかわりそれ相応のものは頂く」という考え方もよろしいのでは。 コンタクトとしてコーポレイト・デッカーを持っていると、企業関係の情報収集の 際に割と役に立ちます。ただし、相応の見返りが必要でしょう。また、彼らは企業 に関するデータや、時としてその企業内での仕事柄、Top Secret についての情報を 握っていることもあります。 また、企業を襲撃するからといって、企業関連の情報ばっかし集めていても始まり ません。施設を襲撃するにせよ、移送中のモノを奪取するにせよ、誰かを暗殺する にせよ、道中なるたけ安全に移動しないといけないわけです。実行中もなるたけ人 目に付かないほうがいい。そのためには企業の「外」に関する情報も必要ですし、 ネオ・アナーキストらしく、手に入れた情報を公開することでターゲットに痛手を 与えるという場合、可及的速やかに公開出来るよう(マトリクス経由であれマスメ ディア経由であれ)手を打っておく必要も出てきます。 企業絡みのビズであったからといって、情報収集をする先は「礼儀作法(企業)」 が必要になるような相手ばかりではありません。 じゃあ、他のどんなコンタクトをどんな風に使うか。 私は個人的にギャングがどうも好きなので(笑)割とよくとってます。他に「ストリー トの噂を仕入れる」という観点から選ぶコンタクトというのもあります。ギャング もそうですが、垂れ込み屋とか浮浪者とか。じつはフィクサーも、こっちの使い方 をすることのほうが多い。メディア・プロデューサーをTV関係者ということにし て、手にいれた情報をニュースのネタとして買い上げてもらったこともあります。 「噂を仕入れる」という点から見ると、基本ルールブックの範囲からだと、「スク ワッター(浮浪者)」や「バーテンダー」などでしょうか。バーテンダーにいくば くかの金を握らせると、「そういえば昨夜の今頃来ていた2人連れが、こういう話 をしていましたねぇ」なんてことが聞き出せるでしょう。ちなみに、バーテンダー も、「冒険者の酒場」のマスターのような職業斡旋はしないと思っていたほうが懸 命です。 一見便利そうで使わない、というのが警察関係のコンタクト。私服刑事(マスター スクリーンの追加コンタクト)なんてよい雰囲気なのになかなか使えなかったり。 警備されたところに入り込むときにちょっくし便宜をはかってもらったくらいか。 このときも入り込む目的は情報収集でありました。中に知り合いが居たのだ(ギャ ングですが……というと「警備された場所」ってのがどこかわかるな)。 魔法の使えるやつをコンタクトにしとくと、なんかっつぅときに金を払ってでも治 療とかしてもらえて便利かな、とかいうのもあります(笑) 魔法使いのPCの場合 に必須なのがタリスモンガーですが、グリモアというサプリメント(翻訳予定には あがっている)で出てくるエンチャント技能を活用すればとらなくてもなんとかな るかもしれない。 同様にデッカー/リガーだと(どっちもやったこたないですが)、デッキ/ヴィー クルを修理してくれるコンタクト、ということになりますか。自分で Build and Repair のスキルを持ってればいらないけど。リガーをコンタクトにして、あっしー 君をやってもらうというのは常套手段です(なぜか自前で足を確保してないPCっ て意外と多い)。 あと、デッカーならテクニシャン系列。リガーならメカニックは必須かも。とくに デッキや車両の改造ではPCだと技術がおいつかないことが多いですから。 ミリタリー系は、実用性という面では確かにシナリオに依存することが多い気がし ます。でも、ガバメントなんてのは、特に企業がらみや国家の問題に絡んだとき、 そして2ヶ国以上を股にかけたセッションなんかでは積極的に活用するとかなり使 えるのではないかと思うのだけれど……。 「何に使えるのかよくわからない」というコンタクトの代表に「通行人」「ファン」 (どちらもマスタースクリーンの追加コンタクト)というのがあるんですが。通行 人の場合、これはもう一般人ですから「かわりに役所にいってくれ」とかランナー ですとかえって胡散臭すぎて行けない所(レンラク・アークのゲームセンターでも いいか)にいってもらうなんていうのが良いかも。群衆に埋没するのがうまいわけ ですし(笑) ファンはもっと直接的に使えますね。ノヴァ・スターの護衛とかのビズなら、その スターに関しての「とっても細かい知識」を引き出すことができます(しかしGM 泣かせかもしれない)。 あとはフレーバーですか。しかし消防士のコンタクトをどう活用するか、未だに思 い付きません(特定のビルの配線見取り図のデータを手に入れる、とかだと使える かもしれん)。 キャラクターのロールプレイとして美味しいコンタクトを目指すならば、コンタク ト自身と、PC−コンタクトの間に“スタイル”があるとよいですね。なぜならそ のコンタクトはPCのスタイルのアクセサリーとしてだけでなく、マスターとの掛 け合いや、ロールプレイの補助に使えますから。 自分の好みのモデルに合わせてコンタクトを取る、とゆーのも、一つの手段という ことです。マスター側から言うと「そのコンタクトでやりたい事」が最初に明確に なっていると、それなりのシーンも作りやすいし、インスピレーションを得たりも 出来たりする、と思うのですがいかがでしょう。 で、実際、コンタクトって、どの程度のことまでやってくれるのでしょう。 コンタクトのスタンスは「知り合い」という程度でしょうか。動いてもらうために は対価が必要でしょう(例えばお金、引き替えの情報など)。 本来、コンタクトと礼儀作法技能の使い方ってとっても画一的で、 欲しいモノ(情報/装備/サービス)がある ↓ マスターに自分の持っているコンタクトの中から適切なものを申告する ↓ それに応じた礼儀作法技能でマスターが指定したTNを振る ↓ 成功の数に応じてそれなりのモノが受け取れる これがBUDDYになれば、もっと親身になってくれるでしょうし、FOLLOWERSとなると 「自分の命にかえても」というノリが期待できます。 「モノ」が情報であった場合のおおよその相場ですが、「手間暇かければ誰にでも 手に入る程度の情報だが、その手間暇を惜しんで買う」ような場合は、数十新円か ら、高くても100新円程度でしょう。 「聞くべきところにあたらないと出てこない情報」、つまり情報源が特定しやすい 情報、売る側としては危険度の高い情報の場合は、数百新円あたりが下限になりま す。基本的にこういう情報は「一度こっきり」しか売らない情報でもあるので、口 止め料込みと考えてよいでしょう。 もっと能動的に「何々について調べてくれ」という場合は、内容にもよりますが、 数百新円から、ときには数千新円になることもあります。私たちが基準としている あたりは、コンタクトのデッカーにマトリクスに潜ってデータを探して来てもらう ようなときには、レッドなノードがなければ5000新円以上になることは殆どない、 ってところでしょうか。セキュリティが甘ければ500新円なんてこともあります。 礼儀作法技能って、実際にどういった場面で利用するのか。その結果どういった効 果が得られるのか。 まず、基本ルールの範囲でPCが選択できる礼儀作法には以下のものがあります。 a) ストリート b) 企業 c) メディア d) マトリクス e) 氏族 z) (番外として、エルフ・デッカーのアーキタイプの)エルフ エチケットはなにかにつけ、人との交渉事の際に用います。具体的にルールで使わ れている用例では、「武器/装備の購入」からしてエチケットが実際は必要です (キャラメイク時を除く)。基本所用時間をストリートのエチケットの成功数で割 りますと「入手できるまでの時間」が出てくるわけです。つまり売人などを見つけ るわけですね(ランナーってたいてい身分証明が無いし通常は所持許可なんてとら ないので、カタギのガン・ショップでは買えないと思われます)。殆どの場合、こ れはフィクサーが相手になりますが、大きなギャングのボスや、マフィア関係者あ あたりでもおっけーでしょう。 その他、コンタクトから情報を引っ張り出すのにもエチケットのロールが必要とさ れることもあります。シャドウランのダイス・ロールの通例にしたがい、成功数が 多ければ多いほど詳細な情報が得られるわけです。 マトリックスのエチケットで言えば、シャドウランド(デッカー専用のBBS)を 捜し当て、そこで情報を仕入れるのもエチケット(マトリックス)が必要です。 市販シナリオでは、情報収集の場面を抽象化して、「Etiquette (なんたら)で振ら せて2〜3個成功だったらこういうことがわかる」とかいう書き方をしてるのが多い ですね。まあ襲撃前の情報収集とかはこれで済ませる方が楽。 だいたいにおいて一番役にたつのはストリートのエチケットですね。なにせランナー はストリートが本拠地ですから。 で、「ストリートや企業、マトリクス等々、サイコロを振るだけなら問題はないの ですが、キャラクターのロールプレイをするとなると、どこがどう違うのかよくわ からんのです」という質問を受けることも多々あります。 これはその「礼儀作法」を使って誰とコンタクトするのかを考えていただければ、 およそのイメージはつかめるかと思います。 まず<ストリート>ですが、ギャング,スクワッターあたりが主な相手です。礼儀 作法という名前ではありますが、ギャング相手に丁寧語を使うとかえってバカにさ れます。セリフ例はアーキタイプのギャングやコンタクトのギャングボスあたりを 見ていただければ宜しいかと。 なお、つかめる情報は「街角で集められるもの」です。いまのしてきているギャン グのボスの情婦は誰か? とか、BTL(電脳麻薬)の売人がよくたむろする場所 はどこか?とかそのようなもの。何かの事件の目撃者であるスクワッタを探すとか もあるかもしれない。 <企業>を使う場合、相手はミスタージョンソンかカンパニーマン、またはセクレ タリーといったあたりでしょう。こちらは丁寧語を用い、相手の利益にもなるよう な(特に何もなければ金銭報酬)話を持ちかけるというあたり。セリフ例はそのへ んの本屋さんにある新入社員教育用の本を見ていただければ宜しいかと(笑) 一部、 Etiquette(Japan)なものもありますが、メガコーポの大半が日系なので気にしない 事にしましょう(笑) 扱う情報は、ライバル企業に関する情報の売り買いというあ たりがスタンダードか。 <マトリックス>の場合は情報を握っているBBSへのアクセス方法を知っている かどうかという意味あいも含みますので、かならずしもマトリックス内部でデッカー 同士がチャットするわけではありません(してもいいけど)。 この「礼儀作法」の技能ですが、必ず集中化扱いになるとかいろいろ謎の多いスキ ルです。一時マンチな人からさんざん「うーむ(^^;) 美しくない(^^;)」と言われ ておりました。 技能説明の礼儀作法のところを見てみると、subculture つまり生活様式というか バックグラウンドというか、ある社会階層ごとというか、そゆので集中化されるみ たいです。んで、エルフはシアトルの中に Elven District というのを持ってます (map-3 参照)。この中で生活するうえでの Etiquette というのは考えられます。 そのでんでいくと、オーク・アンダーグラウンドのエチケットとか、チャイニーズ のエチケットとか、ジャパニーズのエチケット、てのもあるんじゃないかと思われ ますが、まぁあっても不思議はないかと。レンラク・アークで暮らすやつに特有の エチケット、なんてのもあるんだろうな(この場合は<企業>をさらに専門化した ものかもしれない)。 で、例えば<企業>の礼儀作法技能の高いキャラクターが、場末のバーあたりで常 連客に何かを聞こうとしてその技能を使うと「なんでぇこのやろう」な反応が返っ てくると。妙にいんぎん無礼だったりするんでしょう。逆に<ストリート>なやつ がまっとうなサラリーマンに何かを聞こうとすると、えらく下品に思われたりする んだろうな。 たいてーの技能はレートが高ければ「代用」する際にも有利な方向に働くのですが、 上記のような理由から、この技能、特定のサブカルチャーに通暁していればいるほ ど、その作法を使うと、別のサブカルチャーに属する相手に対して逆効果になるん でわないか、というのが考えられます。 んで「必ず集中化しないといけない」,「集中化しないと使いものにならない」と いうあたりから、一般技能としての「礼儀作法」というのも存在しないだろうとす るマスターは多くいます。また「ある分野の礼儀作法は別の礼儀作法の代用に使え ない」とするマスターも多いようです。「礼儀作法」という訳語も誤解を招く元な のかもしれない。「エチケット」でして、TPOをわきまえている、やり方がわかっ ている、程度の意味でしょう。 で、キャラクターとしてのロールプレイですが、企業だと「です、ます調」、スト リートだとかなりくだけた物言い、部族はよくわかんないけどまぁわからなくても さほど差し支えないだろう(部族内で企業風にやればいいんでわ)、マトリクスは 文字どおりマトリクス内だけ(「パソコン通信のお約束」みたいなもんだろう。最 近だと「ネチケット」という言葉もある)、メディアは業界用語で話す、とかまー、 それくらいでいいんじゃないでしょうか。 実際にはそのキャラクターがどのサブカルチャーに属するか、どの分野に顔が広い かといった指針でしょう。<ストリート>しか持ってないやつに、企業のことを聞 いても、こら知らんだろう。市販シナリオによっては「このエチケットを持ってな いといくらダイス目がよくても関連情報は全く手に入らない」というような場合も あります。 日本語版でプレイしている人の中には、コンタクトを相手にする時には礼儀作法や 交渉の判定が必要ないと思い込んでいる人もいるようですが、基本的には必要です。 状況次第でマスターが不要と判断する場合もあるかもしれませんが。