『シャドウランがよくわかる本』ヘンなとこ
(「シャドウランがよくわかる本」(村川忍/グループSNE著・富士見書房刊) 問題点指摘・訂正)
- P.39
- その他に分類したアーキタイプは、ランナーというより、シャドウラン世界の住人の例といった感じ(ギャングメンバー,ディテクティブ,トライブズマン)。
- 怒るぞ...立派なシャドウランナーだ。
- P.53
- エッセンスがゼロになると発狂してしまう。
- ゼロまでは大丈夫です。マイナスになると死亡します。
- P.68
- サイバーリムの説明:重傷を負い、四肢を損傷したときなどに用いる。
- 義肢とサイバーリムを取り違えているようだ。サイバーリムには武器を埋め込めたり色々できる。
- P.71
- イラストの皮膚装甲(ダーマルアーマー)。
- あんなの(皮膚の表面を金属端子が這っているような)じゃないです(原書初版にイラストあり。板(プレート)が皮膚の下に埋め込んであるのが見て取れる)
- P.72
- ボディガードのサイバーウェアの解説:データソフト・リンクはスキルワイアに含まれる。
- スキルワイアは単独(チップジャックは含まれている)で使えるので、含まれない。そもそも、ボディガードはデータソフト・リンクを埋め込んでいないんだが。
- P.76
- ヘビーアーマーは視界が制限されるために、不利な修正を受けることがある。
- 視界のせいだったのか。知らなかった。動きにくいせいじゃないのか。
- P.79
- ポールアーム(竿状武器)は長い槍。
- 著者が武器関係に詳しくないんだな。ルールには、そんなこと書いてないぞ。ポールアームは「槍状」の武器ではあるけれども、決して槍に限定したわけじゃないんだけど。
- P.80
- モノウィップは極細繊維の鞭。
- うーん、まぁ、いいんだけどねぇ。でも、「どんなものでも切り裂く」って、障壁にはすごく弱いんだが。
- P.85
- シャドウランの「東京」では、一般市民が拳銃を携行することは合法的に認められている。
- 日本語版を読んだ限りではそんな記述はなかった。UCAS(カナダ・アメリカ合衆国)でも、許可をもらわないと違法な状況なのだが。
- P.89
- シャーマニック・アデプトはシャーマン見習い。
- ちっ...違うぞ...
- P.117
- サムライの装備のリストフォン:ドクワゴンから支給されたもの。
- 違う。ドクワゴンからは、専用の連絡が取れるリストバンドは支給されるが、電話は支給されません。これは普通のリストフォンです。
- P.119
- バグスキャナー:受信している相手の居場所を突き止める装置。
- 英語では、この相手ってのがバグなので、発信装置の場所を突き止める装置、が正解。
- P.153
- コンクリートの廊下を足音忍ばせて歩くとき、隠密技能で成功判定をしただけである。
- まぁ……ここはこれでいいのかなぁ。なんか隠密というと対抗判定という気がするんだけど。
- 第2版(日本語版の原本)用サプリメント「Shadowrun Companion」p.91 に、隠密の判定について次のようなルールが載っています。
隠れる側が隠密技能で目標値4(+適切な修正)の判定を行い、成功1個ごとに発見する側の目標値を+1する。発見する側は知力能力値で目標値4(+状況による修正+隠れる側の成功数による修正)の知覚判定をする(知覚判定については日本語版ルールブックpp.195-196参照)。
(余談:第3版ルールブックでは、隠密(Stealth)判定は、Open Test(「Rigger 2」で登場し、第3版でも採用されたサイコロの出目の最大値を利用する判定方法)を用いる新しいルールになっています(SR3 p.95))
- P.173
- コンバット・プールは“一戦闘フェイズに一回”サイコロを増やすことができる。
- ルールブックの記述は、一つ一つのサイコロについて見た場合、1戦闘フェイズに1度だけ使える、という意味だったりする。「1戦闘フェイズに1回」というのは、プールの意味でなくて、プールにあるサイコロそれぞれのこと。
ちなみにここで言う戦闘フェイズってのは、アクションの順番が来てから、次の10フェイズ後(あるいは次のターン)のアクションが来る直前までです。
- P.182
- 「ここでは省略しよう」
- をい。NPCも回避するんだということも教えてあげてくれ。まぁ、9ヶというのは回避できるものではないが……。けど、そのあともずっと回避させてもらってないNPCだった。もちろん撃つときも、コンバット・プールも脅威力も使わせてもらってない……。ご愁傷さま。
- P.193
- 転倒判定のルール:「うん、正直に言って、転倒による特別な効果がなければ、省略してもいいルールだと思うよ。手順が煩雑になるだけだからね」「蛇足って気がするんだよね」
- ゲル弾が何の為にあると思っているのだ(一度転べば立ち上がるためにアクションを無駄にすることになり、これはゲル弾の「存在意義」とも言える)。
たしかに通常弾を使っているだけなら(判定で転ぶことはほとんどないので)煩雑になるだけだ、と言いたくなる気持ちもわかるが、かといって省略するのを薦めるような言い方(「蛇足呼ばわり」)はないと思うぞ。今回は省略する、とか言い方はあるだろうに。
- P.202
- カンパニーマンがSSを撃つ際の修正:目標は立ち止まっているから-1。
- 原書では "Attacks against an unmoving, stationary target reduce the target number by 1." となっており、米国のユーザーでも解釈が分かれている。
『まったく動かず静止している目標を攻撃する場合のみ、目標値-1』という解釈も十分にできる。
- 2004年6月7日追記:WAST様(兵器廠惑星)から情報をいただきました。WAST様がFanPro社のRob Boyle氏に問い合わせをされて、次の回答を得られたそうです。(ルールの疑問をFANPROに問い合わせてみた 参照)
目標が立ち止まっているの修正は、移動していないキャラクター全てに適用されます。移動せずに、射撃や魔法をかけようというキャラクターは立ち止まっているとみなされます。
The Target Stationary modifier applies to any character who hasn't moved, yes. Characters who are shooting or casting magic without taking any movement are considered "Target Stationary."
これにより第3版のルール解釈では、『シャドウランがよくわかる本』の記述と同じく、『立ち止まっているので(移動していないだけで)目標値-1』、というのが公式解釈となります。第2版(日本語版の原本)の用語や記述は第3版ルールブックの記述と似通っていますので、日本語版においてもこの解釈に従っていいと思います。
- P.217
- サムライが女の子に反撃してる。
- このサムライ、不意討ちテストで負けてて反撃出来ないはず。(補注1)
- P.222
- 「女の子の強靭力は5。備前の成功数は6だから、サイコロを振るまでもないな。全部成功しても、備前の成功数を上回ることは出来ない」
- 成功数はすでにダメージレベルとして出ているのだからここでは関係ない。強靭力はダメージレベルを下げるために使う。よって、女の子は強靭力5でもってSダメージに抵抗するのだから、上手く行けばLまで下げれた。もっとも反撃そのものが出来てないはずなんで、ひじょーに不条理と言わざるを得ない。
- P.222
- 接近戦闘の転倒判定:判定方法は射撃戦闘とまったく同じ。
- ルールブックのフローチャートと同じミス。目標値が違うので、同じではない。
- P.238
- ハッキング・プールは“一戦闘フェイズに一回”サイコロを追加できる。
- ルールブックの記述は、一つ一つのサイコロについて見た場合、1戦闘フェイズに1度だけ使える、という意味だったりする。「1戦闘フェイズに1回」というのは、プールの意味でなくて、プールにあるサイコロそれぞれのこと。
ちなみにここで言う戦闘フェイズってのは、アクションの順番が来てから、次の10フェイズ後(あるいは次のターン)のアクションが来る直前までです。
- P.262
- “バリアIC”を《偽証》プログラムで通り抜けている。
- 不可能。バリアICを通り抜けるには《透過》プログラムを使うしかない。
しかし、この本のマトリクスの解説部分を読むより、ルールを読んだほうがはるかにわかりやすいな。
- P.274
- バグスキャナーで逆探知出来る。
- 出来ない。どうやって「受信」してるところを探すんだ。仕掛けられた盗聴器とか発信器を探すことは出来るだろうけど。
- P.277
- 精霊収束具:自然精霊でも元素精霊でもよい。
- よい、というか、どちらの精霊にも、対応したそれぞれのフォーカス(収束具)がある、というか。正確に言うと、精霊ごとに別のフォーカスを使わなくてはいけない。
- P.280
- 自然精霊の実体化(マニフェスト):シャーマンの選択
- あらかじめ実体化させておく、というのは自然精霊では出来ないのでは。ルールには「召喚した時には、アストラル体で出現する」と明記してある。
- P.283
- 夜の地下駐車場はかなり暗い(低光量)。
- 共同で使う駐車場がそんなに暗いとも思えないのだが。部分光くらいの照明はあるだろう。屋外の方がむしろ暗いかも。
- P.286
- マジック・プールは“一戦闘フェイズに一回”サイコロを追加できる。
- ルールブックの記述は、一つ一つのサイコロについて見た場合、1戦闘フェイズに1度だけ使える、という意味だったりする。「1戦闘フェイズに1回」というのは、プールの意味でなくて、プールにあるサイコロそれぞれのこと。
ちなみにここで言う戦闘フェイズってのは、アクションの順番が来てから、次の10フェイズ後(あるいは次のターン)のアクションが来る直前までです。
- P.286
- マジック・プール:呪文の成功テストに用いる場合、追加のサイコロは最大でも<魔術>技能のレーティングまで。
- 魔力能力値のレーティングまで、です。
- P.289
- 修正値を割り振る,呪文収束具:これについて、手順(6)での説明になっている(最終目標値が出たあと)。
- 手順の説明で最初に来ている「マジック・プールを割り振る」のところで説明するほうが親切だろう。
- P.298
- なんでここで、コンタクトなりなんなりから『プリースト』の情報を集めようとしなかったのだろう。
- P.314
- ウォーター・スピリットの敏捷力:8(F×2)。
- 敏捷力そのものはF(この場合は4)で、物理空間での走行移動距離がF×2(この場合は8メートル)。(補注2)
- P.317
- アストラル空間で《包み込み》。
- これは不可。《包み込み》てのは、アストラルに影響を及ぼすものではなくて、フィジカルに影響を及ぼすパワーだから。その副作用として、窒息したり装備が燃えたりというのがあるわけで。で、該当箇所と直後の解説を見てみたけれども、アストラルで窒息するんか、このマスタの元でプレイすると。アストラル体が呼吸するというのは、新しい解釈だなぁ。
実際のところ、グリモア(未訳サプリメント)の第1版に「包み込みは近接戦闘である」とあることからも、物理攻撃であると考えるのが妥当だろう。
- P.323
- 収束具ピカピカのメイジが出たのに、アストラルからの攻撃をやらない。
- ルールの説明の手を抜いたせいだろうが、それにしても、何のために「戦士タイプ」を選んだのだ、犬(のシャーマン)。
まずアストラル知覚してる本人に魔力破を撃って、現実世界にいてイニシアティブ遅い相手がプール回復する前に、って、NPCはプールも脅威力も使ってなかったのだな。アストラル爆撃したい放題ではないか。なぜ、やらないんだ。
- P.339
- 接近戦闘:NPCを殺させたくない場合に有効。
- 素手戦闘、それもあの頭の痛くなるシナリオ(RPGドラゴンNo.2掲載「ストリートの掟」)の、世界観を無視した頭の痛くなるような一騎打ちルールしか考えてないな……。武器持った戦闘のことどう思ってんのかな。身体ダメージがいくんだが……。
さて。P.333 以降の、どこを読めば何が載ってる、という解説はなかなかいいと思う。この本の中で一番有益な部分だと思う。
しかし、全体を通して、「シャドウランの『東京では』」と、やたら「東京(つまり日本)」を強調してあるのが目についた。そのくせシャーマン(ストリート・シャーマン)を最初の魔法系アーキタイプとして薦めている。シャーマンが、ネイティブ・アメリカンそのままのトーテム観を持って日本に居るのってすごくおかしいと思う。
シャーマンを薦めるのであれば、まず日本なりの魔法体系を紹介するべきではないだろうか。ロンドン・ソースブックでも、ジャーマニー・ソースブックでもそうだった。シナリオのアイディアとして、「部族からの依頼」というのまで出している。コンタクトを説明するところでも、トライバル・チーフのところに、「シャーマンやトライブズマンなど、部族出身のランナーなら選んでおこう」とある。舞台に東京を設定しておいて、これはないだろう。
日本関係のソースブックが出て、日本におけるシャーマニックな魔法の流派のありかたがはっきりするまでは、日本でシャーマンというのはとても不自然だと思うし、日本での解説がないままシャーマンを薦めるのであれば、舞台はアメリカを選ぶほうがいいんでないかな。そういえばドラゴン・マガジンのリプレイでもPCにシャーマンがいるな。
(by PANIC, 1994 / by Jun MUTO, 1996,1999,2001)
サムライはフェイズ18を未行動ですませているのでフェイズ11の女の子の攻撃には反撃可能です。
と主張される方がいたので、見落としやすいところですし、ルールの説明をしておきます。
(日本語版p.87,不意討ち より)
不意討ちは、ゲーム的にはキャラクターごとに起こります。
(日本語版p.87,不意討ち の続き)
・自分の成功数が相手のキャラクターの成功数以下なら、そのキャラクターに対して直接影響を及ぼしたり、妨害したり、反撃したりする行動は取れません。
(日本語版p.88,不意討ち の続き)
敵側のどのキャラクターの成功数も上回ることができなかった場合は、二重に影響を受けてしまいます。この場合、完全に不意を討たれたことになり、簡易動作も含めて一切行動できなくなってしまうのです。もっとも、自分の戦闘フェイズから10戦闘フェイズ後には、普通に行動することができます。
1対1の状況で不意討ち判定に負けた(敵側のどのキャラクターの成功数も上回ることができなかった)のですから、自分の戦闘フェイズであるフェイズ18から10戦闘フェイズの間は一切行動ができません。女の子の攻撃が行われたフェイズ11は、まだフェイズ8(10フェイズ後)ではありませんので簡易動作すら行なえるはずが無く、反撃するのは明白なルール違反です。
ここもルールブックにちゃんと書いてあるのに、「そんなことはルールブックに載っていなかった」と主張する方が多く、非常に間違いが多いところなので説明しておきます。
シャドウラン日本語版ルールブック250ページ「クリッターの能力値」-「表の略号について」の「敏」の項目に能力値のデータ表記の読み方の説明があります。
(日本語版p.250,表の略号について より)
敏:敏捷力。最初の数値がレーティング、2番目の数値が走るときの修正値です。
つまり、ウォーター・スピリット(水の元素精霊)の敏捷力の表記「F×2」は、レーティングがF(フォースの値)で、走る時の移動可能距離を求める倍数が2ということです。
同様に、空気の元素精霊(エア・スピリット)であれば「(F+3)×4」なので、レーティングがF+3、走る時の倍数が4となります。
他の精霊やクリッターも同じです。
ルールブックの「召喚」についての説明部分(日本語版pp.141-146)でも、精霊の能力の詳しい説明はクリッターの章にあると繰り返し書かれているわけですから、精霊を扱うのであればクリッターの章までちゃんと読んでおいてほしいところです。
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