シャドウラン世界の構造 シャドウラン世界の歴史は「裏返しのアメリカ近現代史」です。グレート・ゴースト ・ダンスがネイティブ・アメリカン・ランドを復活させ、合衆国が再び”インディア ン”と条約を結び、そして南北に分裂していきます。 また「現代アメリカの状況」をファンタジーの要素を使うことにより、巧みにデフォ ルメしています。 Aztlanの進出はヒスパニック系住民の急増に対応しており、メガ・コーポの大半が日 本企業なのも現実の日米経済問題の反映です。 人種差別問題は「種族(RACE)差別」になり、少数民族問題の反映がNANとなります。 さらに環境問題を扱うには格好の題材としてシャーマンの存在が。Toxic Shamanなど はその直接的反映ですが、一般のシャーマンのナチュラリズムにしろ、根は同じです。 さて。 シャドウランで北米以外でオリジナルの設定をする際にも、「裏返しの近現代史」 「現代の社会問題のデフォルメ」という2点を踏まえる事により、その設定にシャド ウランらしさを加える事が出来ます。 例えば「中国」 すでにFASAから公式設定として以下のような設定があります。 1.中国は分裂状態 2.チャイナ・デモクラシー(中華民主共和国?)という自由主義の国家が存在する。 3.香港は英国領に戻っている(が実権はメガコーポが握っている) 4.チベットは独立し、魔法による障壁を国境に築いている。 これらから分かるようにFASAは中国を清末から民国初年あたりをモデルにしてい ることがわかります。軍閥が地方に割拠し、メガコーポという列強が経済を支配して います。2番の設定を、中国沿海部が「自由主義の国」となっているとすれば、現代 中国の改革解放経済のデフォルメにもなります。 民族問題の反映であるチベットは強力な魔法の力で独立しており、北米でのNANと Aztlanの存在にあたるといえましょう。 では「ニッポン」は? FASAの公式設定としては以下のような設定があります。 1.メガコーポの大半が日系企業 2.「帝国」になっている 3.太陽発電衛星を打ち上げている 4.メタヒューマン差別が激しい 5.CFS(カリフォルニア自由州)に軍隊を駐留させ、属国化している 6.2056年に東京オリンピックを開催する この設定は、太平洋戦争前の「大日本帝国」をモデルにしているのは明らかでしょう。 満州のかわりがCFSなわけです。その戦前ニッポンに高度な技術力(設定2)、大 きな経済力(設定1)という現代日本的要素が加わったものが「新日本帝国」(New Japan Imperial States/NJIS−これは日本工業規格JISのもじりでもあります)な のです。 今のところ発表されている日本独自の設定では、こうした点がやや薄いのが気になる ところですが、これは今後出される「トーキョー・ソースブック」を待ちましょう。