■ ストリート ■ PCを知る上でも、世界を知る上でも、スタイルガイドが欲しい こういう意見はよく目に/耳にします。 これに最適なのは、やっぱアーキタイプやコンタクトの Quotes かと。幸いな ことに日本語版でも省略されずに載っていますし。各章の頭にある「ストリー トの諺」とか、架空著名人の一言もいい。 # ひじょーに気に入っていたものの、「どういう日本語訳がつくんだろう?」 # と気にかかっていた 蛇のシャーマン,エス・エル・エル(Ess El El) の部 # 分 ("WELCOME TO THE SHADOWS" という英語版の冒頭) が落とされてしまった # のは残念ですけどね。参考までに原文は # You wanna run the shadows? Then listen, chummer, learn everything # you can, cuz ignorance will kill ya faster than a fireball. # というものでした。"You wanna run the shadows?" の日本語訳って気になり # ません?(笑) つまりそのセッションにおいて、初心者プレイヤーがもっとも必要とした だろうと推測できるシャドウランに関する情報は何か、ということです。 プレイヤーに Quotes だけじゃ不足だと言われたんです。あれだけでキャ ラクターを理解したり、まあ理解しなくてもいいか、とりあえずプレイス タイルを決められる人って、すくなくともハードボイルド小説とか映画と かで、ある程度そういう世界観を会得している人だけなんじゃないの? それでも私は Quotes を薦めます。個々のキャラクターを決めるためにアーキ タイプのそれぞれに付いているものを読むだけでなく、アーキタイプ/コンタ クトのもの全部を読んで欲しい。この世界の他の連中はどういうことを考えて いるのか/どういう考え方をするのか、というのを理解するために一番手っと り早いんじゃないかと思うから。そこらへん理解していくと、世界も少し見え てくるんじゃないかな。自分のPCを固めていくのは、それからでいいと思う。 「シャドウランナーという存在の根底に流れているのはこれだよ」と示せるキィ ワードはいくつかあって、『ネオ・アナーキズム(この SHADOW #3 に同梱され ている別ファイル参照)』とか『プロフェッショナリズム』とか『オン・ジ・ エッジ』とか『都市伝説』とか。 私自身どうやってシャドウランの世界観を獲得してきたかというと、ヴィジュ アルな点ではやはり映画が多い。近未来のパンクな雰囲気というのはやはり洋 画。よく引き合いに出される『ブレードランナー』の、酸性雨の降りしきる街 とか。あとは最初のマスターが雰囲気の描写が上手かった。これに影響されて いる部分はすごく大きい。最初にわけわかめな状態でやったのが傭兵キャラで、 このときは、サイコロ振ってりゃいいや〜、だったな(笑) 無謀にもリガー運 転の車輌の後ろに掴まって移動しようとしたら(よく映画でやってるぢゃない か)振り落とされたり、色々ありました。その次がギャングメンバーで、これ 以降ずっぽりと「ストリート」の空気に染まってます。映画や本で「ストリー ト」感覚を(なんとなくでも)掴んでいた、しかもそれが好きだった、という のは確かにあるな。 それとサプリの山ですね。シャドウランの世界を理解するにはシャドウランの サプリを見るのが一番の早道ではないかと。 The Neo-Anarchist's Guide To North America というサプリでは、シアトル及 び NAN 以外の北アメリカの解説がされてます。物価相関表とか見ているとなん となく情勢が見えてきたりして面白い。一番のお薦めは、やはり Seattle Source- book でしょうか。ほかにも Corporate Shadowfiles とか Fields of Fire と か Lone Star とかいう具合に、一部にスポットを当てて紹介するという形でこ の世界を浮き上がらせよう、という方向でサポートがなされています。Shadow- beat も The Neo-Anarchists' Guide To Real Life も生活の一片のクローズアッ プだし。 具体的に「これこれこういう世界なんだよ」と表現はしてないけど、ピースが 提示されることによってじわじわと世界が見えてくる。私の場合もそうやって 少しづつ見えてきた。示されたピースが絡み合って、さらに Shadowtalk なん かが加わって独特の雰囲気が醸し出されてくる。シャドウランというシステム そのものがそういう形で世界を見せているので、ずばっと「こうだ」と示せる ものってないんじゃないかなぁ。どのピースをどう使うかで、マスターによっ て世界も少しづつ変わってくると。 『サイレント・メビウス』というのがありまして。 困った事に(って頭がシャドウランでなければ別に困る訳ではないが)こ れが近未来魔法&妖怪もの。マトリックスだって出るぞ。リガー・デッカー だな、そういえばこいつ。 このあたりを下敷きにする可能性は割とあるのでわ・・と思う。 で、読むとわかりますが、『サイレント・メビウス』に欠けているのは “ストリート”です。なんかあやしー奴が出る話もあるけど、すごく少な い。士郎正宗氏の諸作品あたりも下敷きになる可能性高いけど、やっぱり “ストリート”がないわな。多少はあるけど「チョイと出」くらいだし。 「ストリート」の感覚ってすごく大きいわな。んでもって「これがストリート だよ」というのもまた説明しずらい。『セサミ・ストリート』だって『ウォリ アーズ』だってストリートなのだ。 実はサイバーパンクのパンクたる所は“ストリートの存在”にあるわけだ から、これをクローズアップするのが実は一番かもしれない。 最低限どの要素が入ってるとストリートか、ってのは、「ストリート」の説明 の必要を感じてからこのかたずっと考えているのだが、いまいち決め手がない。 個々の要素を取り出していくと、日本にもありふれているものばっかりだった りする。日常生活の一部だから。「企業活動」というか、「勤め人としての日 常」にはあまり関係なかったりするんだけど、そのサラリーマンが一個人の場 面には関係があることも、とか、すぱっと説明出来ない。 じつは、ダークコンスピラシー(日本語版)のシナリオ『シンギング・イン・ ザ・ストーム』かなんかいうのを持ってまして。なんで買ったかというと、こ れに「スラム」の解説が載っている。スラムを解説しないといけないほど日本 は豊かなわけで。ただ、「ストリート」の説明に流用できるようなものではな かった。 理解できない人にまで無理してシャドウランを薦める必要があるのか、つー 意見はなしね(^^;)、とりあえず。 実はこういう意見なのね(^_^;) シャドウランの「匂い」って結構人を選ぶと 思ってるし。アメリカではやたらウケたみたいだけど、その建国以来受け継が れて来た精神みたいなものが、日本と全然違うなというのは、いろんな面から 感じているので、アメリカでウケたほど日本ではウケなくてもしかたないよな〜 とか考えているのだった。例えばグループ SNE の手によるリプレイ、あれに違 和感を感じている英語版からのプレイヤーって多いのだけど、そういう意味で、 日本で大流行するとして、これまで私たちが「これがシャドウランだ」と思っ てたものとは違うものである可能性が高い。尤も、英語版からのプレイヤーが 思っている「これがシャドウラン」ってのも、個人差があるだろうし、唯一の 正解でもないだろうけど(でも SNE リプレイのシャドウランの世界観よりは、 FASA の路線に近いものだと思うなぁ)。 −− 世界の住民としての心得 −− まず、第一歩として、PC達は確かに一芸に秀でているかも知れないけれど、 社会的には抹殺されている、と言うことを覚えておきましょう。どんなに喧嘩 が強くても、コンピュータの扱いがうまくても、まぁ、言葉は悪いですがホー ムレスみたいなもんです。ホームレスと違いがあるとすれば、ホームレスには 人権と、食料の配給やら職場探しなどの社会的扶助がある、と言うくらいのモ ンでしょう。 やっぱり、世の中、モノを言うのは暴力や技術よりも金と権力です。そして、 シャドウランの世界では金と権力はメガコーポと呼ばれる大企業に集中してい るのです。なぜなら、権力とは即ち金で、金はメガコーポに集中するからです。 PCであるシャドウランナーが住む世界「ストリート」は、やはり「体制/反 体制」で言えば「反体制」。メガコーポとかの企業支配には入っていない、と いうか落ちこぼれている。整然とした企業社会に対するアンチテーゼでしょう。 で、一つ間違わないで欲しいと思うのは、ストリートって無法地帯じゃな いのね。全然足りないにしてもポリスの力が及ぶところなのだ。よく近未 来のポスト・ホロコーストもののアクション映画で、暴力の支配する荒廃 した街なんてのがあるけど、あれってストリートじゃないよね。 生活していくうえでのルールはストリート独自のものが法に優先し、ポリスは 「勢力の一つ」というあたりか。必然、暴力的傾向は高いわな。住民自治って いえば言えるけど :) で、「都市」でないと存在出来ない。ストリートは都市の「裏の顔」なわけで、 生産性を担う大きな部分が無いと困るわけです。ストリート自体は決して「生 産者」ではない。だから村落共同体にはストリートって無いでわ。 この「表の顔」を代表するものが「コーポ」であり、コーポに属する「シャ イクジン/ウェイジ・スレイブ」であり、SIN 付きのクレッドスティック で日常生活を送れる人々なわけです。 で、日本ですが。 まず住民自治って意識が薄い。それと隅々まで「体制支配」が行き届いている。 意識構造的にも「でっかい村落共同体」だとよくいわれますが、やっぱ村には ストリートできないやね(だから村落共同体の香り漂う下町になるのだった。 いっそ日本のランナーは浪花節を基本として…… :))。 で、前に戻りますが。私を含めて、翻訳以前からシャドウランをプレイしてい る面々というのは、たぶん、そういう要素 -- 例えば銃犯罪の多発 -- がある 世界に生きている人間は、そういう要素に直面したときにどういう対処をする か(知識として)知っている。そして正しい対処をしても、必ずしも回避出来 るものではないというのもわかっている。むろん日本語訳が出てから始めた人 の中にも知ってる人はいるだろうけど、知らない人も多いと思う。 例えば銃声がしたら伏せたり物陰に走り込んだりする、「フリーズ」と言われ たら声のしたほうをとっさに振り向いたりせずに身動きしない(確実に自分の ほうが腕が上で、振り向きざまに爲留められるという確信があれば別)。実際 に自分の身体がそう動くかどうかは別にして、そういう世界に住んでいるヤツ ならそうするだろうことを知っている。 これをしみじみと実感したのが、先の「某教団東京総本部前拳銃乱射事件」 ではありました。周囲を取り囲んでいた報道陣は銃声が鳴り響いた時、何 をしたか。 「伸び上がって、どこから銃声がしたのか確認していた」 のです(^^; 素晴らしい。シャドウランなら修正−1(いやいや−2かな) をプレゼントしたいところです :) 最近でこそ、日本でも銃を使った犯罪なんてのも日常化してきましたが、まだ 住人に対処法が身に付くほどでもない(幸いなことに)。そういうものが無い ところに、そういうものがある背景世界を持つものを持ってきて、「知識」の ほうは与えていない。このあたりがやっぱり「政治的に正しい」プレイに流れ てしまう原因なんじゃないかと思うがどうだろう。 先日、別の記事のために映画関係の本を見ていて発見したんですが、アメリカ では最近「土地を囲ってしまって限られた人しか入れないようにする」という “ゲート付きコミュニティ”が増えて来ているとか。数軒から多いとこだと千 軒以上の敷地を塀とゲートかなんかでぐるっと囲んで出入りを制限して、治安 の維持をはかるんだそうで、まるで西部劇の開拓村。 シャドウランの世界にもやっぱこういうのあるんだろうなぁ。警備会社もピン からキリまで色々あるみたいだし(有名どころがローンスターとナイトエラン トで、それぞれ "Lone Star Security Soucebook" と "Corporate Security Hand- book" というサプリメントが対応しているようです)。そういう Secured Com- munity にサービスを提供しているような、そこそこの規模の警備会社もいっぱ いあるに違いない。 これの極端な姿が「アーコロジー」ではないだろうか、という話もありますが、 警備を突破しようとする側から見ると結果的に似たよなもんだと思うけど(程 度の差こそ極端なれど)、住人自ら求めたという点が大きな違いじゃないかと。 で、アーコロジーから誰かを連れ出すってのが小説 "Never Deal With Dragon" の冒頭で、これは連れ出される側が望むケース。基本ルールにも多分載ってる んじゃないかと思われる Restraint(拘束具)に Screamer とかいうのがある んだけど、アーコロジーの住人は、居住区以外ではどうもこれを着用(?)させら れているらしい。読んだ中では、レンラクアークの下の方の、外部の人も利用 出来るショッピング・モールで着けさせられていた。勝手に出て行かないよう に。勤務中がどうだったかはちと失念。でも、当人のセキュリティ・クリアラ ンス(笑)以外の場所に入らせないための規制が、何かあるはず。アークの外に 出るときは、行き先指定で、指定場所から外れるとやっぱ Screamer が作動す るんだったと思う(しかも護衛 -- Red Sam -- がくっついて来た(^_^;))。こ うなるともう「安全を買う」というより軟禁状態でわ。しかしアークの住人は それを当然として受け入れてるんだろうなぁ。 # 従業員がどこにいるかすぐわかるシステムは、実際に研究されているはず。 −− ギャングメンバー −− 私がアーキタイプの中で、一番「ストリート」を体現してるようですごく好き なのがギャングメンバーなんです(^_^;) 私の回りのマスターのオリジナル・ シナリオではよく雑魚敵として出されるのが悲しい(はっ、もしかして私に対 する嫌がらせかっ)。で、こいつらについて、割と日本では認識が間違ってる と思うんで、ストリートと併せて説明してみようというのがこの章。 先日 TV で初めて『48時間PART2 帰って来たふたり』を見ました。やはりパー ト2というかなんというかまぁ映画的には前作ほど面白くなかったんですが、 それはどうでもいい。ちとストーリーのネタばらしになりますが、この映画の ウリはストーリーではないと信じるのでいいだろう。 ニック・ノルティ演じる刑事がアイスマンと呼ばれる裏の世界のボスを追い続 けており、エディ・マーフィー演じるところのチンピラがその情報を知ってい る。そこでこの二人を消すべくアイスマンが刺客を放つわけですが、こいつら が実に見事にゴーギャングのランナーだなぁ、と思った次第。 「ギャング」てぇと、イタリア系の組織を連想する方もいらっしゃるでしょ うが、シャドウランでは、こちらの流れはマフィアになります。で、ギャ ングてのは集団そのものを指しますので、構成員個人はギャングメンバー ということになります(のでシャドウランのアーキタイプもそうなってい る)。この単語も長くてめんどいので、ギャンガー ganger という呼び方 をします(英語版ではそう呼ぶことがある)。マフィアのメンバーの場合 は、マフィア・ソルジャーというのもコンタクトにありますが、ギャング スター gangster とも言います(Prime Runners に居る。但しヤクザ系)。 舞台はサンフランシスコなんですが、このギャンガー達、L.A.のバイカーの一 員です。数年の間に2桁の殺しをやってるという連中。普段は暴走族まがいの ことをやっているけど、ビズがあると出かけていって仕事するらしい。 暴走族というと日本のティーンエイジャーの暴走族を思い浮かべる向きも いるかと思いますが、むしろアメリカのヘルスエンジェルスを想像してく ださい。ローリング・ストーンズのコンサートの警備に雇われて、興奮し た客を殺してしまったことのある連中です(いつの話ぢゃ〜)。数カ月前 に幹部が数人逮捕されたんですが、持ってた装備(武器だけではない)も 罪状もなかなかのもんでした。中には「探知機をごまかすための袋」とい うのもあった。ピストルや手榴弾なんかが入ってるんですが、たぶんステ ルス素材を使った入れ物なんだろう。 チャーリー・シーンが主役を演じた『キング・オブ・ハーレー(Fixing the Shadow)』という映画は、実話を元にした映画で、巨大な力を持つゴーギャ ングに潜入捜査するんですが、こいつら、麻薬やピストルはもとより、ミ サイルの密売までやってました。シャドウランでは小さなストリートギャ ングのメンバーが雑魚扱いで敵になりますが、大きな組織になるとギャン グといえど侮れません。 で、L.A.のギャンガー二人に指示を出す立場のやつが一人いました。海兵隊上 がりということで、爆薬を渡されて、エディ・マーフィーの車の盗難防止のた めの警報装置のスイッチに連動させるという技を見せていた。こいつがまぁス トリートサムライ相当になるんかな(もちろんサイバーウェアなんぞ入ってま せんが。サムライとギャンガーと傭兵の中間くらいだな)。三人の中では最初 にやられたけど(^_^;) 他に、ランナーを揃えるフィクサー役なヤツもいた。 ここらへんの参考にするにはいい映画かもしれない>『48時間パート2』 ど うでもいいけど、ゴーギャングな二人はバイクの技能も割と高かった(笑) そいでもって私は言いたい。40代でギャングでもいいぢゃないか〜。但し ギャングの中でそれなりのカオになってないとちとアレだが。この映画に 出てたのが20代半ばのと30前後だと思う。海兵隊上がりのやつはもっと上 に見えた。前述の『キング・オブ……』も、ボスは30代後半、主要メンバー の殆どが30代40代に見えたな。 んで、先日某氏と話してたんですが、やはりこれ、アメリカ的なバックグラウ ンドがあるというのが大きい。某氏曰く「競艇でスッて、シケモクふかしてる オジサンたちも、もしストリートのエチケットと拳銃もってれば、立派に老け たギャンガーに更正すると思うな」。私は思わないです(^_^;) ところでシャドウランのギャングには2タイプあって、もう一つがストリート ギャングと呼ばれる一派。ゴーギャングが、拠点はあるものの広い活動範囲を 持つのと違い、自分達が住むところを縄張りとします。ゴーギャングより構成 メンバーの年齢も若い傾向にある。私が持ってる、ニューヨークのストリート ギャングにインタビューした本では(時代は現代です)、15歳のボスが出てき ます。3人の子持ちだそうだ。やっぱり縄張り争いをしてて、移動は自転車で やる(^_^;) 武器は、モノにした女の子の母親(貧しいんですよ。ストリート ギャングのボスの女になって、盗みなんかで得た金や食料がないと暮らしてい けないくらい。だから母親は、自分の娘がそうなって喜んでいます)がキープ してて、必要になったら持ってきてくれる。それでも日本のいわゆる「チーマー」 より、武装化度,暴力依存度はかなり高いです。ギャングについての詳しいこ とは、Seattle Soucebook に記されています。Prime Runners にも何人か登場 します。なお、このインタビュー本に出てくるギャンガー達、電話もないのに なかなかの情報入手力でした。 このストリートギャングをネタにしたシナリオが、サポート誌であるドラゴン マガジンだかRPGドラゴンだかに載ったことがあります。作者は『シャドウ ランがよくわかる本』の村川氏。ところがこれが「ストリートの掟」とかいう ありもしないものを使ったものでした。あんな「ストリートの掟」なんてあり ません(どういうものかは、却って害がありそうなんで書きません)。 先ほどの某氏との会話でも出たんですが、このシナリオで重要なのは、人質と されている女の子が、ギャングボスに、自分から付いて行ったという部分。ラ ンナーが相手にしようとしているのは「女性を誘拐するような悪人ではない」 わけです。だから「殺してはいけない」。おそらく「政治的に正しい」シナリ オだったんだろうな。うぅむ。あぁ話がズレまくっている。 さらにドラゴンコミックにおけるマンガ『シャドウラン』関連で出た話題に以 下のようなものも。このマンガ、企業に「我々の私有物だ」と言われるストリー トサムライが出てくるんですが。 ストリート・サムライの「ストリート」っていうのには、フリーランスである という意味合いも含んでいると思う。メガコーポ子飼いのサムライは、コーポ レイト・サムライなどと呼ばれることもあるし、そもそもストリートっていう イメージとはかけ離れているよね(なお、実際には、アーキタイプの一つであ る“フォーマー・カンパニーマン”が「元コーポレート・サムライ」という位 置付けだと思ってもらって間違いありません。キャラジェネ時の数値間違いの せいで、かなり弱っちくなってしまっているが。リプレイの紫雲が割とそうい う「元コーポ・サムライ」の演技を上手くやっています。が、こっちのほうが ストリートな他のキャラクターよりランナーっぽいってのはナンだな)。SNE 展開における背景世界関連の手抜きが、こんな基本的なところまで害を及ぼし てると考えるとぞっとするものがある。 −− 映画に見るストリート/シャドウラン −− 映画の話が出たんで、そのついで。 まぁ洋画(特にアメリカ映画)では、現代モノである限り“ストリート”が出 てこないものを探すほうが難しいくらいですが、ストリートの雰囲気プラス・ アルファのあるものを思いついた中からご紹介。 ・ブレードランナー 「サイバーパンクな世界を映像で」というと、たいてい真っ先に上がるの がこれでしょう。タイレル社の巨大な建造物はレンラク・アークと重なる ものがあります。その足元の影の中にチャイナ風タウンがあるというのも 類似性の一つ。ここらへんの映像の、街や建物の「汚れ具合」って、日本 のものを見るたびに、ちょっとは真似てくれよ〜と言いたくなる。「そっ かー、サイバー/バイオウェアって、こやって作られるんだなぁ」みたい なシーンがあるのもよいかも。他に『フューチャーキル』あたりも。 ・ストリート・オブ・ファイア むー、まんまなタイトルがついている。これに出てくるボンバーズという ギャングがアジトにしている倉庫街のようなところがあるんですが、これ、 たぶんもろにレドモンド,プーヤラップあたりの雰囲気でしょう。ただし この映画、おとぎ話 -- A Rock'n'Roll Fable -- なので、実際にどういう 「悪いこと」をしてるかは、ストーリーの核となるヒロイン拉致以外出て きません。ラストでは、ひじょーにリアルマンな決闘が見れます(笑) ス テロタイプな悪役のデフォさんがとっても good(←好みの押しつけ)。 ・カラーズ - 天使の消えた街 - こちらは現代現実もの(ノンフィクションという意味ではない)。ストリー ト・ギャングってどういうものかよくわかります。どういうことで抗争し てるのかとか、ほんっとにちさい子までが構成員なんだとか(ランナーに なれるようなのは、だから、ギャングメンバーの中でも上のほう)。ギャ ングつぅと、他に近未来バイオレンスSFアクション(^_^;)に『クラス・ オブ・1999 処刑教室2』ゆーのが。これには高校生のグループの対立が 出るんですが、この様子はけっこーシャドウラン世界のストリートギャン グの抗争に近いものがあると思う(中盤の撃ち合いはちょっとちょっとだ が -- なわけで、この映画、シャドウランの参考にするつもりなら、前半 を見るだけでいーです(^_^;))。 ・子どもたちをよろしく ストリート・チルドレンを扱ったドキュメンタリーです。しかも場所はシ アトル。ちとストリートというには住宅街すぎるところも出てきますが、 現実なんです。これのオリジナル・タイトルが "Streetwise" なのだな。 「ストリートで生き抜く知恵」とかいう意味なんだろうけど、これっても ろ Etiquette(Street) だと思う。もっとシャドウランちっくに、ビル街の 中がいいってんなら、あの『T2』のファーロング君が出て、あまり流行 らなかった(^_^;)『アメリカン・ハート』いうのが。こちらもシアトルで す。シアトルが舞台という映画は他にも割とたくさんあって、有名なとこ ろだと『張り込み』の1と2。『ドラッグストア・カウボーイ』には2050 年代にはティル・タンジェル(Tir Tairngire) になっているポートランド が出てきます。 あと、たぶんスパイク・リー監督の作品なんかには、いっぱいストリートな要 素がつまってるんじゃないかと思うし(←あまり見てない)、『JM』も、シャ ドウランの舞台の参考という視点から見ると使えるんじゃないかと思うし(や ぱし見てない(^_^;))。エディ・マーフィーの出てる映画って、ぢつわあまり ストリートの匂いがしない、とかもあるな(『48時間』は別)。スタローンと かシュワルツェネッガーとかM.J.フォックスとかのも、そういえばストリー トな雰囲気のあるものは少ないような気が。ビッグネームの出てる映画ってあ まりストリートの参考にはならんかも。 他にもいっぱいあって、だーっと名前だけ列記するという荒業もあるけど、か えってごちゃになりそうなんでひとまずこれくらいで。シャドウランにも White Wolf の "World of Darkness" シリーズや SJG の GURPS みたいに、「これを 参考にしたまい」リストがついてるとよかったな。 # 邦画でストリートなのって、邦画自体あまり見ないのでよく知らないのだが、 # いくら「裕福じゃない」と言っても少なくとも『寅さん』シリーズじゃない # と思う(^^;) 思い付いたのが『爆裂都市』だけなんだが……。 −− ストリートの金銭感覚 −− 先にエディ・マーフィーの出てる映画ってあまりストリートの匂いがしない、 と書いたんですが、先日 TV で見た『大逆転』もそうだったな。マーフィー君、 映画冒頭では社会の最底辺にいる生活をしてたわけですが、やはりストリート な部分は出てこない。 が、一つだけ収穫。そういう最底辺な生活をしてるやつが、行きつけのバーに 行く。バーテンから「おめぇよく顔出せたな」と言われる。ツケが溜まってる んですね。最底辺の生活レベル -- Street Lifestyle -- のやつが、おめぇに はもうツケでは飲ましてやれん、と言われる金額が26ドルだか27ドルだかでし た。ドルはだいたい新円と同じ価値だと思えばいいです。 この映画、設定が極端なので、27ドルがまぁ4倍になったとしても、だいたい 100新円くらいです。今の日本円に換算して一万円を越すと、「こいつ払いきら んかも」と思われるだろうと。つまり100新円て、ストリートな住人にとっては 結構使いでのある金額なんです(物価そのものを日本 -- 特に東京あたりの都 市部 -- のそれに当てはめて考えると、そこでズレが出ます)。なんで100新円 つまり100ドルにこだわるのかというのは、後で説明します。 いちおー参考までに Seattle Sourcebook についている2050年代のシアトルの 物価を一部。 ・カプセルホテル 25n\(NAgRL で 30n\ に値上がり) ・ホテルの朝食(チップ込み) 5n\ ・ファミレスで夕食(同) 23n\ # これくらいでも Street Lifestyle な人にはそう簡単に毎日毎日は出せない # 金額でしょう。 ・路線バス: ダウンタウン内はタダ。都市近郊部で 1n\ ・プロ・スポーツ: いい席での観戦 35n\ ・単純な情報 20n\ ・デリケートな情報 200n\〜 「単純な情報」ってのは、例えばBTLチップはどこで買えるか(最末端売買 でしょう)とか、その手の、ある程度手間暇かければ誰にでもわかるけど、時 間を惜しんで買う情報の類。逆にここで妙に大金払ったりすると、胡散臭いヤ ツと思われかねません。金銭感覚が自分達とは違う、別の世界(社会/コーポ とかマフィアとか)の住人、下手うつと敵、と見られるわけです。或いは、ヤ バイことが絡んでいて、かかずらうと後で面倒なことになると勘ぐられ、追い 払われます。なお、BTLチップとか、えっちなお楽しみとか、そこらへんだ いたい50n\です。 「デリケートな情報」てのは、それこそ事情を知ってる者しか知らない、当た るべきところに当たらないと出てこない情報ですね。ちょっと込み入った、出 所の目星がつけやすそうな→自分が喋ったとバレそうな→危険度の高い情報だ と、金額も張ります。ドラマガの初回のリプレイで「一人あたり400新円ぢゃん」 と評判が悪かったのも、このあたりの値段が基準としてあります。 んで、そういう「相場」を把握してる、というのもエチケット(礼儀作法)の スキルに含まれますので(ストリートに限らない)、PCが払うべきときに出 し渋ったり、逆に素っ頓狂な金額を提示してしまったようなときは、判定の目 標値に修正入れてしまってよいと思います。当たる相手を間違えないってのが 大前提としてありますが、このあたりは、アーキタイプやコンタクトの、説明 の部分やスキルを見ていくと、だいぶわかります。 参考までに、私がアメリカ映画から得た判断基準を書いておきます。よく私服 刑事あたりが、めぼしいバーに入って一杯注文したあと、バーテンにこそっと ドル紙幣を渡して情報を聞き出したりしてますが、あれはたいてい10ドル札で す。場合によって2枚だったりします。道端の酔っぱらった浮浪者相手だと、 1ドル紙幣でしょうか。末端のヤクの売人が卸元から仕入れるときに、10ドル 紙幣や、ときには20ドル紙幣を10枚単位で丸めて筒にしたような形にしたもの を、現物と交換してるシーンを見たこともあります。卸元がさらにその上の密 輸組織と取引したり、密輸組織が南米とかの密造組織と取引するような場面で は、さすがにトランク一杯とかになりますんで、100ドル紙幣も見かけることが ありますが(こっちはどうせロンダリングしないと使えない金)。誘拐犯が身 代金を、「使い古した小額紙幣で用意しろ」と指示することもありますね。高 額紙幣は使いにくい上に、使ったとき相手に自分が使ったということを覚えら れる危険も高くなるからです(使い古したものを、というのは、番号を控えら れるのを恐れてです、もちろん。このあたりは日本も同じ)。 アメリカでは、50ドル紙幣以上は殆ど一般には使われることがありません。日 本の場合より偽札が作られることが多いせいもあって、あまりハイソでない所 では、100ドル紙幣は釣りがないと言って使用を断られることもあるそうです。 どうやるかというと、10ドル20ドルくらいの紙幣をいっぱい払う。このあたり で既に日本での感覚が通用しなくなりますね。 ハイソな場所で高額なものを買うときは、現金よりクレジットカード、もしく は小切手が使用されます。シャドウランではクレッドスティックで金銭の流通 を行っていますので、100ドル紙幣のような基準はないんですが、一体に100新 円を越える金額の場合、その情報にアクセスすること自体が大きなトラブルに かかわっていると、聞き出そうとする相手に判断されると考えてよいでしょう。 逆に言うと、相手がその気でいるのなら(自分は大きな情報を握っていて、そ れを売ってやろうってんだから景気よく払えよな、とか思っている場合)、数 百新円が相場というところですか。それなりのコネクションがある相手に、あ ることについて調べてくれ、と言って依頼したような場合だと、内容に応じて ですが、時には数千新円のオーダーになることもあるでしょう。