Thalion >>>>>[Nothing is more revealing than movement.]<<<<< -- Martha Graham (1894-1991), U.S. dancer, choreographer.  このテキストは、Shadowrun 世界におけるシャーマンの歴史、思想、戦略などに ついて、その指針となるような内容を著者のかなり主観的な判定基準に基づいてま とめたものです。このテキストが新しくシャドウランを始める人、既にシャドウラ ンをプレイしている人、それ以外の人、に多少なりとも役に立つといいな、と筆者 は思っています。初心者に偏った知識を与えるなっ、という人もいるかも知れませ んが...(^^;)。  尚、このテキストの著作権並びに内容についての責任は筆者 Thalion (thalion@os.rim.or.jp, GAF00174@niftyserve.or.jp)が持つものとします。転載な どについてのお問い合わせ、あるいは内容に関するご意見ご質問等はこちらまでお 願いします。 コンテンツ ========== ▼基礎知識編 1. 歴史 2. トーテム 3. 伝統とストリート 4. 呪文 5. 自然精霊の召喚 6. アストラル知覚  7. アストラル投射 ▼応用知識編 1. シャーマンの宇宙  2. 普段の生活 3. 仲間との付き合いかた 4. 装備 5. 精霊とそのパワー ▼戦術編  1. 相手の正体を探るには 2. アストラル偵察の利点と欠点 3. 精霊を活用する 4. 呪文防御を忘れずに 5. 常に領域を意識する 6. アストラル爆撃 7. 精霊が現れたら 8. 呪文の使い方を考えよう 9. 複数の精霊を呼び出す 10. パワーは急には使えない ▼参考文献 ############################################################################ 基礎知識編 ############################################################################ 1. 歴史 ======= Shadowurn 世界におけるシャーマンを語るためには、まずその歴史について知っ ておくのが早道です。それはこの世界にリアルパワーとしての魔法をもたらしたの がシャーマンであるからです。 ダニエル・コールマン。この名前をまず覚えておきましょう。彼は 2010 年代に 活躍したネイティブアメリカン(インディアンという呼び方はこの際だから改めま しょう)運動家の一人で、迫害されてきた彼ら一族の権利と誇りを取り戻すために 戦いました。彼と仲間たちの一連の活動は極めて優れたもので、最終的には UCAS 海軍のネレイド級原子力潜水艦を奪い、また ICBM のサイトを占拠するに至りまし た。 こう言っては何ですが、これらの業績は一介の民族運動家がやった仕事にしては かなり派手過ぎます。多少のカリスマ性があったにせよ、物理的な力の殆どないは ずの民族運動団体にどうしてそんなことが出来たのでしょうか? 実はそれを可能にしたのがそのころはまだ一般には知られていなかった「魔法」 なのです。ダニエル・コールマンは彼らの部族では「ホーリングコヨーテ(Hawling Coyote)」、つまり「遠吠えするコヨーテ」という名を持っており、彼はその名が 示す通りコヨーテのシャーマンだったのです。 実際、彼らの「暴動」を何とか実力で押え込もうとした UCAS 軍に対しては、お よそ常識の範疇では不可解としか言いようのない災いが襲いました。曰く強烈な竜 巻、不気味な濃霧、嵐などです。その都度、軍は制圧対象を見失ったり、自然災害 に巻き込まれて大きな被害を被ったりしました。 一連の努力の結果、それでも軍は一度コールマンたちの身柄を拘束することに成 功します。しかし彼らは軍をあざ笑うかのようにいともたやすく収容所から脱出し てみせます。見張りの兵たちの証言によれば、彼らの姿は「突然かき消すように消 えてしまった」と言われています。 今となってみればこれらは全て容易に説明がつきます。そう、精霊と呪文のなせ る技です。 ホーリングコヨーテたちの駆使する精霊と呪文の威力の前に、何ら対策を知らぬ 軍は本来の力を発揮することできず、なす術もなく敗走するしかありませんでした。 そして彼らは世界のパラダイムを決定的に変えてしまう儀式を行ないました。そ れが「偉大なる交霊の踊り(Great Ghost Dance)」です。この名前を忘れてはいけ ません。シャーマンにとって、全ての始まりはここなのです。 この儀式は多数のシャーマンを擁して行なわれた一種の儀式魔法でした。この魔 法の代償は彼らの生命エネルギーであり、参加者の中にも多数の死者がでました。 これはライフマジック、あるいはブラッドマジックと呼ばれる非常に強力な魔法で す。これによりこの世界の魔力ポテンシャルは格段に増大し、これまでは迷信や錯 覚、妄想として片付けられていた事象が真の力を得ることになります。 これが「魔法の復活」です。これによって魔法がリアルパワーとしてこの世界に 現れたことになります。 この後ネイティブアメリカンの主要部族を中心としたいくつかの国家がその魔法 の力を主な背景として独立し、 NAN (Native American Nations) と呼ばれる連合を 形成しました。この NAN 政府の初代大統領(正確には NAN の統合体である主権部 族評議会の議長)がこのダニエル・コールマンです。彼はその後 2037 年まで同職 を勤め、引退しました。その後の行き先は漠として知れません。 2. トーテム ===========  一般的に言われるトーテムとは、本来特定の社会的集団(例えば家族、部族など の)によって崇められている物体(大抵は動物や植物などの生命体)を指す言葉で す。トーテムはその家族そのものの絆を体現するものであり、しばしば同じトーテ ムを持つ者との婚姻は近親婚であるとして禁止されたこともあったと言われていま す。また、トーテムはその一族の守護者として崇拝されており、大抵はそのトーテ ムを象ったボディペインティング、仮面、あるいは良く知られるトーテムポールな どが作られています。 Shadowrun 世界で言うトーテムというのは、主にネイティブアメリカンの概念を 流用した物で、特定の動物に対し、その習性や外見的特徴、あるいは民間伝承など で果たす役割を元にして擬人化されたキャラクタを指します。例えば蛇は大いなる 神秘の探求者であり、アライグマは天才的泥棒でトリックスター、犬は誠実な同盟 者、熊は力強き治癒者、という具合で、「トーテム信仰」という宗教の一種の神と 言えないこともありません。 Shadowrun の世界では、こうした信仰イメージに過ぎなかったトーテムが実在す るようになります。トーテムは精霊のように形を持って現れることはありませんが、 折りに触れて自分のパートナーであるシャーマンに力を与え、導いていきます。そ のもっとも顕著なケースは、シャーマンが自分の素質に目覚める時に聞く「トーテ ムの呼び声」です。 シャーマンとなるものがトーテムの声を聞く瞬間は、その人生において最大の転 機となります。大抵それは突然訪れ、強烈な精神的高揚をもたらすと言われていま す。また、事故や病気などの臨死体験の際にその声を聞くケースも多いようです。 >>>>>[もし貴方のキャラクタがシャーマンなら、トーテムからの呼び声をいつ、ど んな形で聞いたかがそのキャラクタを立てる重要なポイントの1つとなりま す。これを活かさない手はありません]<<<<< トーテムがどうやって自分のパートナーを選ぶのかはまだわかっていません。逆 にトーテムが選ぶのではなく、定められた運命によってそう「なるのだ」と主張す る者もいます。いずれにせよトーテムはそうした何らかの縁(えにし)によって自分 のパートナーとなったものに語りかけてその素養を引き出していきます。一説によ ると、全ての知的存在にはその守護者たるトーテムが決まっており、シャーマンと しての能力を持つものだけがその声を聞き、その力を借りることができるのだとも 言われています。 シャーマンとそのトーテムとの関係は決して(どちらを上下としても)主従関係 などではありません。両者は共に助け合いながら、曲がりくねった道を共に歩む仲 間です。彼らは同じように考え、同じように振る舞う友人同志のようなものなので す。シャーマンの性格、考え方はそのトーテムのそれと良く似ています(トーテム がシャーマンに似ているという言い方も出来ますが)。勿論シャーマンが自分の トーテムが取るであろう行動とは逆の行動を取ったりすることもあるでしょうが、 それは彼の本意では無いはずです。トーテムを否定することはつまり自分自身を否 定することに他ならないからです。もしシャーマンがその能力を失うことがあった としたら、それはトーテムを軽んじたり、あるいは余りにも頻繁にトーテムと衝突 するシャーマンにトーテムが見切りをつけて助力を拒んだりしたからでしょう。 トーテムには様々な種類があり、その個性もまちまちです。大抵はそのトーテム の個性にマッチした援助をそのシャーマンに与えてくれます。また、トーテムには それぞれ個性があり、大抵はシャーマンの一般的行動傾向もこの個性に似たものに なります。犬シャーマンは律義で友達思い、鰐シャーマンは普段はものすごく怠惰 だが、動き出すとカタが付くまで突撃するとか。シャーマンはトーテムを選んだ時 点でそのキャラクタの一般的傾向は決まってしまうと言っても過言では無いでしょ う。どのトーテムの個性がどんな風で、どのような援助を与えてくれるかはルール ブックの「トーテム」の項目を参照してください。 3. 伝統とストリート ===================  シャーマンには2つの種類があります。古くからの伝統に則り自然の中に身を置 いてその精霊と交感する伝統派のシャーマンと、都市伝説の中に生き、街角に身を 置くストリートシャーマンです。ルール上での能力では両者に違いはありません。 主な違いは両者が持つトーテムの違いであることが殆どです。つまり前者はウィル ダネスのトーテムを持ち、後者はアーバンのトーテムを持つということです。  伝統派のシャーマンは、「人界の汚れの中では正しい精霊の声を聞くことが出来 ない。邪道だ」として、ストリートシャーマンは「世界は覚醒したのだ。精霊はど こにでもいる。問題は、古臭い伝統に縛られてその声に耳を傾けようとしないこと なのだ」として、お互いの主張を叫んでいます。メイジに対する反目ほどではあり ませんが、両者の間には多少のわだかまりがあります。 >>>>>[実際のプレイは都市部から始まることが多いので、伝統派のシャーマンより はストリートシャーマンを使うことが多いはずです。伝統派のシャーマンは 本来都市にはいないはずなので、まずそこに居る理由から考えなければなら ず、ちょっと導入が大変になりがちだからです。]<<<<< 4. 呪文 =======  メイジと並んで、シャーマンは呪文を行使することが出来ます。使える呪文の種 類、フォース、使用する技能(Sorcery)などはメイジと同じですが、シャーマンと共 に在るトーテムの力により、特定のタイプの呪文にはボーナス/ペナルティが与えら れることを覚えておきましょう。ボーナス/ペナルティは、大抵「特定のタイプの呪 文を行使する場合のマジックプールの一時的増加/減少」という形で与えられます (例外もあります)。例えば、鼠シャーマンは幻覚呪文と探知呪文を使う場合に + 2 、戦闘呪文に -1 の修正がかかります。これは鼠の「直接戦闘は避けるが間接的 な方法で相手を惑乱させる」という特性をそのまま引き継いだ能力と思われます。 こうした特性のため、新規作成時や成長時にシャーマンの PC がどんな呪文を習得 するかは、呪文の必要性とは別に、そのトーテムとよく「相談して」決めるのが賢 明です。 5. 自然精霊の召喚 =================  メイジとシャーマンの能力は非常に似通っていますが、この自然精霊の召喚は シャーマンにしか出来ません(一部のアデプトはこの際除いておきます)。自然と 交感し、その大いなる力を借りることは、シャーマンにだけ可能な技なのです。  自然精霊には「領域(Domain)」という概念があります。これは平たく言えばその 精霊が行動できる範囲のことで、これは主に地形によって制限されます。自然精霊 は自分の領域に縛られているため、シャーマンは特定の自然精霊を呼び出す時には その領域の中に入らねばなりません。例えば住居精霊(家の精霊)を呼びだそうと 思ったら、その家の中に入らなければならないのです。  シャーマンにはトーテムの援助があると前に触れましたが、自然精霊の召喚につ いても援助があります。特定の精霊を呼び出す場合にやはりダイスプールの増加が あるのです。大抵はそのトーテムの得意とする領域で召喚できる自然精霊を呼び出 す時にボーナスが与えられます。例えば鮫シャーマンは海洋精霊を呼び出す時に + 2 のボーナスがつきます。これが何故かは言うまでもないでしょう。  自然精霊はその種類によって異なる能力を持っています。キャラクターメイキン グの際に、プレイではどういう精霊を呼び出したいかなどを頭の隅においておくと 良いでしょう。 6. アストラル知覚 ==================  アストラル知覚は物理空間にいながらにしてアストラル空間を覗きこむ能力のこ とで、メイジ、シャーマン、一部のアデプトが使うことが出来ます。この能力に よって、物理空間からでは見ることの出来ないアストラル空間での出来事を知るこ とが出来ます。アストラル空間では生命、精霊、魔法的な物品(フォーカス等)は 総て光の形で現れ、相手が生体ならそのオーラの強度、色合いによってその相手の 魔力の高低、肉体的コンディションの好調不調や精神的動揺などまで知ることが出 来ます(どこまで解るかは判定の結果に依存しますが)。  ただし、アストラル知覚には「アストラル空間から接触される」という大きな欠 点があります。本来、精霊やアストラル投射中の魔法使いなど、アストラルだけの 存在は物理空間には一切影響を及ぼせない(=攻撃、呪文、特殊能力の行使などが 出来ない)というルールがあります。しかし、アストラル知覚を使っている者は この例外となり、アストラルから簡単に攻撃されてしまいます。ですからいくら いろいろな情報が手に入るからと言って、気安くアストラル知覚を使うのは止めて おいた方がいいでしょう。もちろん本当に必要な時はためらうべきではありません が。 7. アストラル投射 =================  アストラル投射は一時的に自分の肉体を離れ、精神体であるアストラル体となっ てアストラル空間を自在に移動する能力です。アストラル体となった魔法使いは自 分の理想とする姿を持つ一種の精霊のような状態になります。アストラル体はアス トラル空間で生体と看做されるもの(生命体、精霊、二元生物、魔法的物品)以外 には一切遮られることなく自在に移動することが出来ます。このため、偵察行動な どにはとても有用です。更に、収束具や固定具などの魔法的物品も一緒に持ち込む ことが出来ます。  ただし、この投射を行っている間、自分の肉体は昏睡状態となり、全くの無防備 になります。また、投射が行える時間も魔力の値によって制限を受け、その時間が 切れても肉体に戻れなかった場合、死んでしまいます。 ############################################################################ 応用知識編 ############################################################################ 1. シャーマンの宇宙 =================== シャーマンは世界をどのように見ているのでしょうか?表に現れてくるシャーマ ンの行動は、そのトーテムや主要な活動場所(アーバン/ウィルダネス)によって大 幅に違ってきますが、その世界観はほぼ同一です。 キーワードは「畏敬」です。シャーマンは世界を畏敬の念をもって捉えています。 世界はシャーマン自身の力などでは到底把握し切れない偉大な存在であり、シャー マンはその存在を従えるのではなく、その中に自らを進んで一体化させようとする ことによって、大いなる世界から僅かな力を借りることができるのだと考えていま す。 よく高慢なメイジがこう考えます。「世界というのはつきつめて考えれば計算し つくすことができる。結果としての系は複雑ではあるが、理論さえ正しければ最終 的にはそれを操ることができるはずだ」と。とんでもありません。世界は我々の姑 息な知識など及びもつかない深い謎に満たされており、それを操るなどとはとてつ もない思い上がりです。いつか途方もない報復を受けることになるでしょう。 ここで昔話をしておきましょう。世界が覚醒を迎える前の時代のことです。今で は UCAS と呼ばれている国の科学者が、台風の中心にヨウ化銀化合物を投入して台 風を消滅させようとしたことがありました。しかし彼とその国は手痛いしっぺがえ しを食らいました。その台風は予想を遥かに超えてに成長し、本来あり得ない迷走 軌道を描き、その国に多大な被害をもたらしたのです。覚醒前ですらそれほどの力 を持っていた世界です。今同じ轍を踏めば何が起こるか、それ位の想像力を働かせ ることができて当たり前です。 「君達は自分が何をしているのか、全くわかっていない」 「君達の目は節穴か。その耳は飾り物か。見るべきものを見よ。聴くべき声を聴   け」 シャーマンは、世界と一体化するために必要なものは「感情の高揚」であると考 えています。つまり俗に「シャーマニック・ハイ」と呼ばれる高揚状態において、 彼らの魂は世界の諸力をチャネルすることができるようになると信じられています。 彼らが儀式に用いる様々な音楽や踊り、薬草などはこれを助けるための道具です。 2. 普段の生活 =============  シャーマンの普段の暮らしは、そのトーテムによって大幅に違ったものになりま す。鼠のシャーマンは普段からごみごみした狭く不潔な所を好みますし、逆に猫の シャーマンは極度の潔癖症です。梟のシャーマンは昼間は殆ど出歩かず、鷲の シャーマンは人里離れた場所で世捨て人のような生活をしています。鰐のシャーマ ンはきっと自分の手の届く範囲に大豆ピザや合成ミートバーガーやらを並べて怠惰 な暮らしをしているでしょう(クレッドが尽きるまでは)。貴方のシャーマンがど のような生活をしているか、ルールブックにあるトーテムの解説の部分を読んで、 それに見合ったものを想像してみてください。例えその結果がゲーム上で多少不利 であったとしても、それを敢えて受け入れてみることで、自分のシャーマンの特徴 を際立たせてくれる筈です。 3. 仲間との付き合いかた =======================  これはシャーマンに限ったことではありませんが、シャドウランナーはいつでも 独りぼっちの存在であるという事をまず意識しましょう。タイトルには「仲間」と 書きましたが、ここで言っている仲間というのは単に「一緒の仕事をする連中」と いう意味に過ぎません。チームを結成してチームカルマを持っているようなグルー プならともかく、普段貴方が一緒に仕事をするような連中は、基本的には他人で す。例えばビズの最中に貴方がヘマをやったとしても、彼らに損害が及んだり、ビ ズ自体の進行が危ぶまれたりなどしない限り誰も助けてはくれないのだという事を キモに命じておきましょう。この大原則を理解した上で、次に読み進んでくださ い。  仲間と付き合う事を考える場合、2つの事柄を考慮する必要があります。  まず、トーテム。トーテムの中には、「犬」や「狼」のように仲間に対して強い 忠誠心を持つものや、「熊」のように傷ついたものを放っておけない強い保護欲を 持つものがいます。そうしたトーテムを貴方が背負っている場合、仲間との付き合 いかたは先程述べたものとは大幅に違って来ます。つまり、シャドウランナーとし てはかなり風変わりな存在となります。仲間の中には貴方のその特性を利用しよう とするものもいるでしょうが、それはそれで受け入れなくてはなりません。それは トーテムの特性であり、つまり貴方がどうしても譲ることの出来ない生き方だから です。  次に考えるべきなのは貴方の能力です。シャーマニズムのトラディションを持つ 者として、メイジとの折り合いをどうつけるかを考えねばなりません。大抵のメイ ジたちは貴方がトーテムと語り合ったり、呪文を使う時に奇妙な声を上げたり歌っ たり踊ったりするのを「非科学的だ」とか「迷信じみている」と攻撃します。貴方 はこうした失礼なやつとどのように付き合っていくのか考えなければなりません。 「生半可な知識で世界を理解したかのように思い込んでいる増上慢」と罵り返すの でしょうか、それとも「相互不可侵」とばかりに無視を決め込むのでしょうか? それは貴方のキャラクタの性格次第です。 4. 装備 ======= キャラクターメイキングの際に悩みやすいのが装備です。シャーマンはほとんど お金がかからないと言って良いため、結構贅沢な買いものを楽しむことができます。 武装(銃器) ---------- まず、貴方はそれほど銃の取り扱いが上手ではないはずです。更に言えば、戦闘 中はアストラルの制圧、精霊への指示、呪文の投射などで忙しく、まず銃など撃っ ている暇はありません。ですから、サムライが持つような LMG/SMG など持っても ほぼ使う機会はありません。抜き撃ちで銃を撃つのと、呪文を唱えるのではどっち が速くて確実か、考えるまでもないはずです。 >>>>>[色々意見はありましょうが、貴方は自分がシャーマンだということを忘れて はなりません]<<<<< ですから、貴方が持つべき武装は護身用と割り切るべきです。せいぜい Super Warhawk あたりの Heavy Pistol か、ショットガン(Defianse/Roomsweeper)程度 にしておくのが良いでしょう。また、貴方が対魔法使いの対処能力を持ちたいと思 うのならば、実ダメージよりはスタンダメージを重視し、弾丸は Stun Round とし ておくのが良いでしょう。また、スタンダメージ重視、という点から見ると Taser というのも良いチョイスです。射程の短さという欠点はありますが、そこさえカバー できればそれなりの運用が可能です。拷問にも使えますし(^^;) 迷ったら、まず「自分にとっての銃は護身用に過ぎない」という点を忘れずに、 出来るだけ隠蔽度の高いものを選びましょう。ピストルを買ったら忘れずに隠蔽ホ ルスターも買いましょう。  また、資金に余裕があったら、割り増し料金で偽造の銃器所持許可証を手に入れ ておけば、急なローンスターの検問にも慌てずに済むかも知れません。お薦めです。 武装(格闘武器) -------------- まず、貴方は....以下同文。貴方が格闘戦をしなければならないようになったら、 事態はかなり切迫している....というよりほぼ絶望的と言えるでしょう。相手にも よりますが、自分から打って出るのはやめて防御に集中するのがおそらく最善だと 思います。 さて、こういう事態を想定した場合、ちょっとでも自分を有利にできる武器を選 んでおきたいのは当然です。格闘戦の場合、最も簡単に効いてくるのは武器のリー チです。つまり長い武器を使った方が有利なのです。だからと言ってカタナやコン バットアックスを使えというつもりは毛頭ありません。これらはあまりにも隠蔽度 が低過ぎますし、貴方の技量でこれらを振り回せるとは思えません。 お勧めの武器は「スタンバトン」です。これはリーチがある上、スタンダメージ とショックが入れられるという優れものです。テーザーと同様、拷問にも使えます (^^;)。また、スタンバトンが無理なら、単に Staff という手もあります。シャー マンなのですからそれなりの彫刻を入れたり、フェティッシュをぶら下げたりして 凝ってみたいとこではあります。これらはいずれも入手難易度が低く、隠蔽度もそ れなりです。 武装(防具) ---------- これはほとんど好みの領域ですが、重装備をしたシャーマンというのは殆ど無意 味なだけでなくダサいものである、とここで言い切ってしまいましょう。大抵の シャーマンは補強コート、ジャケット、アーマーベスト程度の装備しか身に付けな いのが普通です。また、アーマーベストと補強コートの重ね着、というのも有効な 方法です。基本ルールでは重ね着をしても防御力の増強には一切役に立ちませんが、 補強コートの隠蔽度ボーナスというメリットがあります。 車両 ----  必ずしも買っておく必要はありませんが、余裕があったらバン等を購入しておく と良いでしょう。これは大抵ビズの場所まで動いたりするのに車が必要となるため です。またこの車の中に家財道具一式を積み込んで、車に「住んでる」というのも 面白いかも知れません。車両運転の技能を持っていなくても普通の運転は可能です から、必ずしも技能を取る必要はありません。いざとなったら誰かに「傷なんかつ けんじゃねーぞ((c) Rust)」と言って運転させればいいのです。貴方は助手席でふ んぞり返ったまま。 魔法的装備 ----------  まず、忘れてはいけないのは巫術小屋(Medicine Lodge)の材料です。巫術小屋と いうのは本来ネイティブアメリカンたちが儀式を行うために設置した小屋やティー ピーなどのことを指します。巫術小屋は俗世と離れて精霊と交感する場所であり、 貴方のトーテムとより深く触れ合うためにも必要な、一種の「祭壇」です。ルール 上では新しい呪文を覚えたり、儀式魔法の時に使う程度かも知れませんが、貴方が 本当にシャーマンを演じるつもりがあるのなら、スタイルとして是非とも必要なの がこの巫術小屋です。  戦力面から言えば収束具/固定具の類があるとかなり便利です。中でもパワー フォーカスが使えると最高なのですが、かなり値段が張るため、せいぜい買えて フォース3が関の山でしょう。お薦めは、貴方のトーテムからの援助のある分野の 分野呪文収束具です。これなら比較的割安ですし、トーテムからの援助との相乗効 果により、あなたがその分野の呪文を使う場合の効果、ドレイン抵抗力が目覚まし く上昇します。また、精霊収束具は特定の精霊に限定しなければならないため、 様々な領域でランをこなさなければならないシャーマンにはコストパフォーマンス の面であまりお薦め出来ません。ですが、Grimoire-II を導入しているのならば、 ウォッチャーの召喚に用いるウォッチャー収束具がかなり有効であるということを 書き添えておきます。 その他の装備 ------------  これ以外に持っていたい装備としては、携帯電話があります。これはビズメイト やコンタクトとの連絡を取りやすくする為です。全員が持っていればかなり迅速に コトを運ぶことが出来るでしょう。  また、もし貴方のトーテムの性格が許し、かつ資金面での余裕があれば、レー ティングの高いマグロック・パスキーを購入しておくと良いことがあるかも知れま せん。  最後になりましたが、資金があまっているようなら、装備ではなく、コンタクト に回すというのも一つの手ではあります。 5. 精霊とそのパワー =================== ここではシャーマンが呼び出すことの出来る自然精霊と、その特徴的なパワーに ついて簡単に解説します。実際の場面での運用の参考にしてみてください。 人界の精霊 ----------  人界の精霊の特徴は比較的敏捷性が高い割に筋力が低いことです。 住居精霊: ビルの中、研究所、その他の建造物の中に侵入した時、頼りになるのがこの住居 精霊です。恐らくはランの間に最もお世話になる精霊だと思います。この精霊の最 も特徴的なパワーは、「隠蔽」と「混乱」、そして「捜索」です。「隠蔽」は味方 を敵から発見されにくくしてくれますし、「混乱」は敵をほぼ無力にしてしまいま す。また「捜索」はターゲットを探すのに便利です(ただし、大抵のビズのター ゲットとなるメモリチップは高度に技術的な代物で、この能力で探すのはちょっと 難しいかも知れません)。 田園精霊: 畑や公園などがこの精霊の領分です。この精霊はそれほど強い力は持っていませ んが、それでも「隠蔽」と「捜索」が使えます。 都市精霊: 路上、広場、路地、廃棄された建物などがこの精霊の領域となります。つまり、 バーレンなどの廃棄された研究施設などではこの精霊のお世話になることになりま す。この精霊は様々な能力を持っていますが、その中でもひときわ強力なのが「混 乱」と恐怖です。共に敵を無力にすることの出来る力ですが、特に「恐怖」は相手 を無条件で潰走させる事も出来、うまく使うと圧倒的な勝利を得ることが出来ま す。 地界の精霊 ---------- 地界の精霊の能力は、その力の源である大地の特性を反映しており、精霊にして は高い筋力と強靱力を持っています。その一方で敏捷性が低いためイニシアティブ が取りにくく、また移動距離も短いという特徴があります。 砂漠精霊:  通常のビズをこなしている限り、まず殆どお目にかかれないのがこの砂漠精霊で す。CFS(カリフォルニア自由州)のモハベ砂漠などに行くことがあれば出会う機会も あるかも知れません。この精霊は「攻撃」のパワーを持っている数少ないものの1 つで、荒れ狂う砂嵐となって直接敵を攻撃します。また、場所が場所だけに「移 動」のパワーもかなり助けとなるでしょう。 山岳精霊:  シアトル近郊だと、とりあえずはレイニア山の方までいければ出会う機会もある かも知れませんが、やはりこれもなかなかあえない精霊の1つです。やはり場所が 場所だけに「移動」「守護」「事故」の力がかなり有効に効いてくることでしょう。 森林精霊:  本来は森の精霊なのですが、ニューヨークのセントラルパークのような、かなり 広い公園などでも会うことの出来る精霊です。やはり「混乱」と「恐怖」が強力で す。 平原精霊:  人の手の入らない平地やツンドラなど、ということですが、シアトル近辺に「単 なる平地」でありかつビズの対象となりうる場所があるかというと、あまりなさそ うです。NAN 方面でビズを受けることがあれば、どちらかというと味方より敵とし て出て来そうではあります。「隠蔽」と「移動」と「探索」あたりがつかいどころ でしょうか。 気界の精霊 ---------- 気界の精霊は大抵風に由来する性質を持っており、敏捷性があり移動力が高い一 方で、強靱力と筋力が著しく低いという傾向があります。 雲霧精霊: この精霊は、霧やもや、雨といった気象条件さえ満足していれば、大抵はどんな 場所でも呼び出すことが出来ます。12月のシアトルはかなり雨が多いため、この 精霊に出会うことも多いかも知れません。大体この精霊が出てくる時には視界が悪 化していることが多いはずですので、「混乱」や「隠蔽」あるいは「事故」が役に 立つでしょう。 旋風精霊: 雷雨、台風、竜巻、暴風など、かなり荒れた気象条件でないと呼び出すことが出 来ない精霊ですが、その内包する力はすさまじいものがあります。この精霊は「隠 蔽」「混乱」「恐怖」という使えるパワーに加えて「電撃」という直接攻撃能力を 持っています。更に Grimoire-II では「落雷」をもたらすルールが追加されてお り、非常に強力な精霊です。 水界の精霊 ---------- 水界の精霊はパラメータ的にはかなり貧弱です。筋力、強靱力は並み、敏捷性と 移動力は辛うじて地界の精霊をわずかに上回る程度です。しかし、水界の精霊は全 て「包み込み」という直接攻撃能力を持っています。 海洋精霊: 海の上でのビズ、例えば船舶での移動を伴うようなものを行う場合に使われる事 の多い精霊です。大いなる海の力を象徴するだけあって、かなり沢山のパワーを 持っています。「包み込み」は水の元素精霊が持っているそれと良く似た直接攻撃 能力です。「恐怖」「混乱」「隠蔽」「移動」など、一通りのパワーを持っている ため、海上ではかなりの助けとなることでしょう。 河川精霊:  川や運河などの大きな水の流れや、入り江、河口がこの精霊の領域です。この 精霊は海洋精霊のマイナーバージョンといったところで、「混乱」と「疎外」を 持たない以外はほぼ同じ能力を有しています。「包み込み」を直接攻撃として 使うことが出来る点を覚えておきましょう。 湖水精霊: これは開けた湖を領域とする精霊で、シアトル近辺にはいくつか湖がありますか らそこでのビズで出会える事でしょう。河川精霊とほぼ同様の能力を持ちますが、 「隠蔽」を使うことが出来ません。 湿原精霊: 湿地をその領域とします。唯一「束縛」のパワーを使う自然精霊であり、他にも ほぼ海洋精霊と同種類の能力を持つためかなり強力です。場所が沼地だけに単なる 「移動」の能力もかなり有効に使うことが出来るでしょう。 ############################################################################   戦術編 ############################################################################ 1. 相手の正体を探るには ======================= まず魔法使いの情報収集の基本は「アストラル知覚」の応用です。別の項でも降 れましたが、アストラル知覚は様々な情報を提供してくれます。どんなことがわか るかと言うと: a)相手がサイバーウエアを入れているかどうか? これはエッセンスの低下がオーラの違いとなって現れることを利用したもの です。どういう種類のものを入れているかはわかりませんが、大まかにどこ らへんの部位に入っているかは見当がつきます。例えば腕だけエッセンスが 異様に低ければおそらくサイバーアームか何かが入っているのでしょう。 b)相手がマンデインかどうか? 相手の Magic の高低を自分を基準として知ることができます。マンデイン (=魔力を使うことができない人。フィジカルアデプトはマンデインではない) と魔法使いを見分けるのは比較的簡単です。ただし、これは相手がイニシエ イトでない場合に限ります。イニシエイトのオーラは、貴方がイニシエイト でない限りマンデインと見分けることができません。 c)相手が呪文を使っている/呪文の影響下にあるかどうか? 相手が呪文を使っていたり、あるいは誰か別の魔法使いがかけた呪文の影響 を受けていたりすると、その影響はオーラに明確に現れます。交渉相手が 呪文を掛けられていたら、何か良くないことが起きているのではないか、と 疑ってみるべきでしょう。 d)相手が魔法的物品を持っていないか? 収束具、固定具の類を持っていないかどうかを知ることができます。ただし これはその物品が活性状態でなければ発見することができません。また、イ ニシエイトはマスキングと呼ばれる能力によって、これらを隠すことができ ます。 e)周囲に怪しい精霊/アストラル体はいないか? アストラル空間にだけ存在するような存在、精霊やアストラル投射した魔法 使いなどはアストラル視覚で簡単に発見することができます。フォースの高 い精霊は物理空間からでも肉眼で視認することができますが、アストラル視 覚を使えば確実に発見できます。ただし、アストラル視覚を使っている間は アストラル空間からの攻撃を受ける状態になってしまいますので、注意が必 要です。 f)儀式呪文が送られていないか? 魔法的に豊かなリソースを持った相手を敵に回した場合、貴方の居所が儀式 魔法によって知られたり、直接何らかの呪文が飛んできたりする場合があり ます。アストラル視覚を用いると、こうした儀式呪文が送られる際の「筋」 を発見することができます。この「筋」ができてから実際に呪文が飛んでく るまでには少し時間がありますから、これを発見した後に何らかの方策を 打つことができます(手遅れでなければ)。 g)相手が感情を動揺させていないか? これは尋問と組み合わせて使うと効果的な方法です。オーラはその持ち主の 感情や肉体的コンディションに強く影響されます。オーラを見ながら尋問を 行なえば、嘘をついているかどうかまではわからないものの、相手が動揺し ているかどうか位なら知ることができます(嘘を知りたければ Detect Truth の呪文を使うと良いでしょう)。 大体以上のような情報を手に入れることができます。ですが、2つ注意しておく ことがあります。まず、貴方がアストラルを覗いているかどうかは、見る人が見れ ば一発でわかってしまいます。能力の知れない初対面の相手に、いきなりアストラ ル視覚を試そうとすれば、一歩間違うと敵対行為と取られかねません。次に、前に も触れましたが、アストラル知覚を使っている間は、アストラルから攻撃を受け得 る状態になっているということを忘れてはいけません。月並みな結論ですが、アス トラル知覚を試す場合にはそれなりのTPOを考えてからにしましょう。 2. アストラル偵察の利点と欠点 ============================= 空間をほぼ自由に移動できるアストラル体になっての偵察行動は非常に有効な情 報収集手段の一つです。使い方によっては敵状を手の平に取るように知ることすら できます。ただし、アストラル投射には様々な利点と欠点があります。ここではそ れについて説明します。 利点: a)非生命体を通過することができる アストラル空間では、魔法的に見て生命とされないもの(大部分の建造物は これに相当します)は、視界を遮りはしますが、アストラル体で通過するこ とが可能です。これにより、物理的な障壁には一切阻まれることなく、偵察 を行なうことができます。 b)物理空間との相互作用がない 物理空間からでは、アストラル知覚を使わない限り、アストラル体の存在を 検出する方法がありません。これはつまりマンデインの視覚やセンサーなど には一切引っかからないことを意味します(ごく一部の例外がありますが、 これはサプリメント Corporate Security Handbook を導入しない限り大丈夫 です。それが何であるかはマスターに「聞かない」ようにしましょう。ヤブ ヘビになりかねません(笑) c)高速移動が可能である アストラル体は高速、低速の2つの移動モードを切替えることができます。 このうち、高速モードは毎秒数千メートル単位の高速移動が可能であり、 遠隔地へと情報を伝えることが可能になります。 d)イニシアティブが速い 大抵アストラル空間にいる方がイニシアティブが高くなるため、様々な状況 に素早く適応することが可能になります。 欠点: a)生命体は通過できない 例えば蔦が密に生えた壁などは通過できません。 b)認識できる現象に限界がある アストラル体でいる間は、全ての事柄がアストラル的な知覚に置き換えられ るため、人工的に加工された情報はほとんど認識できなくなります。例えば、 アストラル体であっても、肉声の会話は聞きとることができますが、電話や CD の再生音になってしまうと一切無意味な雑音にしか聞こえなくなってし まいます。 c)物理空間と通信しにくい アストラル体となって得た情報を、物理空間で待っている仲間に伝えるには、 自分の肉体に戻るか、あるいは「顕現体」となって幽霊のように出現するし かありません。いずれにせよ、緊急の場合に対応するのは少々困難を要しま す。 d)完全にフリーではない アストラルからの侵入者が想定される場合、最も簡単な対策は、精霊を配置 することです。精霊は全ての現象をアストラル視覚で感知しますから、アス トラル体の侵入を検出することができます。また、精霊だけではなく、一部 のセキュリティではアストラル視覚を持ち、かつアストラルに攻撃を加える ことのできる二元生物(ヘルハウンド、バシリスクなど)を調教して使ってい る場合があります。こうした場合、油断していると手痛い打撃を被ることが あります。 e)精霊が召喚できない(??) 正式なルールかどうかについてはまだ議論が残る点ではありますが、解釈に よっては、アストラル空間では精霊が召喚できないことになっている場合が あります。これはマスターに事前に問い合わせておくべきでしょう。 4. 呪文防御を忘れずに ===================== 精霊を主力として使うことは先ほど書きました。ではその間シャーマンは何をす るべきでしょうか?攻撃呪文を使うのも手ではありますが、相手が Willpower の 貧弱な FCM 程度ならともかく、それなりのリソースを投入して作ったバリバリの サムライが相手だったら(そして不幸なことに、大抵のシナリオに出てくるサムラ イはバリバリです)、マナボルト程度では戦況に対した影響は出ません。まず貴方 がするべきことは、呪文防御を確保することです。貴方のマジックプールを周囲に 配分して、予想外の敵からの呪文攻撃に備えておかねばなりません。特に周囲が開 けた場所であったりする場合には注意が必要です。 また、戦闘中だけでなく、移動中にも呪文防御を怠ってはなりません。特にチー ム全体が1つの塊になって移動することになる車両や小型船舶などに乗った場合、 敵はその乗物自体を攻撃して来る可能性があります。こうなるといかに強大な火力 を持ったチームでも、クラッシュや沈没により一撃で致命傷を受けかねません。常 に呪文防御を忘れてはなりません。 5. 常に領域を意識する ===================== 貴方は世界に呼びかけてその力を借りる者です。その助力のうち最もわかりやす いものの1つが自然精霊です。しかし自然精霊はどこにでもホイホイと現れるもの ではありません。彼らはその「領域」というものに縛られており、その領域の外で は召喚に応えることはできず、また領域の外に出ることも、その外にいる相手に影 響を及ぼすこともできません。 ですから、貴方は常に自分がどの領域にいるかを意識していなければなりません。 例えば貴方がビルの中で住居精霊を呼び出して自分を隠蔽して貰っていたとします。 しかし精霊の力が及ぶのはビルの中だけ。道路に出たとたん、貴方の姿は再び現れ てしまいます。道路は都市精霊の領分だからです。 また、普通の自然精霊が一切貴方の呼び声に応えられなくなる場所も存在します。 それは「汚染領域」と呼ばれる領域で、化学的な汚染物質などが流出して、本来の 自然を歪めてしまい、精霊が正しい姿で召喚されなくなってしまった場所のことを 指します。大抵は核廃棄などの汚染物質の流出地帯などがこれにあたり、バーレン の中にはこれに相当する場所が多数存在します。こうした領域では「汚染精霊」だ けが召喚可能ですが、通常のシャーマンは歪められた精霊を呼び出すことはできま せん。また、汚染領域は普通の領域とは別の領域として扱われますので、その領域 には通常の自然精霊は侵入することができません。 幸いこうした汚染領域はアストラル視覚で簡単にチェックすることができます。 シャーマンは常に周囲の状況に気を配り、怪しいな、と思ったらアストラル視覚で 周囲を調べるなどして、この汚染領域の中にできるだけ入らないように注意すべき です。 6. アストラル爆撃 ================= 貴方がキャラクタを作った時、呪文固定具を持っていたとしたら、貴方のマスター はにやりと笑って、「爆撃に気をつけなよ」と忠告してくれることでしょう。ある いは「爆撃があるから使わない方が良いよ」とまで言ってくれる親切さを持ち合わ せているか知れません。 基本的に、アストラル空間から物理空間へ呪文をかけることはできません。アス トラル空間から物理空間という方向には障壁のようなものがあり、普通はこれを越 えて呪文を飛ばすことはできないと考えて下さい。物理空間の対象に呪文を行使し ようとする場合、術者も物理空間にいなければなりません。これを技術用語では 「物理・アストラル対象性の要請」と呼ぶこともあります。しかしこの例外となる ケースがあります。それはアストラル空間と物理空間の間に魔力の抜け道がある場 合です。 活性状態にある収束具/固定具の類は、アストラル空間と物理空間とをつなぐ 「橋」の役割を果たします。アストラル空間にいる魔法使いは、この「橋」を目が けて呪文をかけることにより、物理空間に呪文を出現させることができます。これ を「アストラル爆撃」といいます。 この方法によりアストラル空間から物理空間に出現した呪文は、その出口となっ た収束具/固定具を中心として効果を表します。つまり、貴方の隣に活性状態のの 固定具を見に付けている人がいたら、突然そこを中心として理力球(Power Ball)が 炸裂するということもあり得るということになります。 ただし爆撃に使える呪文には制限があります。まず、その呪文が「物理」タイプ の呪文であること、そして呪文が「操作呪文」でないこと、です。 活性状態にある収束具/固定具は、魔法的には一種の二元生物として扱われます。 アストラル空間で放たれた呪文は、まず対象のアストラル部分に着弾します。そし てそこから物理空間に存在する物理的構成部分に伝わり、そこを中心として呪文が 作用します。このメカニズムに従うと、マナタイプの呪文では、物理空間側に抜け ることができません。このためマナ呪文では、収束具/固定具のアストラル部分を 破壊して使いものにならなくすることはできますが、周囲を巻き込んでの「爆撃」 はできません。 >>>>>[この部分は基本ルールでは記述されていませんが、ShadowFAQ などでは Vanilla とされている回答です]<<<<< 一方、操作呪文は物理空間を伝搬する必要があるため、爆撃に用いることはでき ません。 基本的に、爆撃はその対象となる収束具/固定具のレーティングが低いほど成功 しやすくなります。ここで問題となるのは固定具のレーティングですが、これはど んな呪文をどんなフォースで込めていたとしても常に「1」として扱われます。 このため、固定具を ON にしておくということは非常に危険であるということが お分かりいただけるかと思います。 もう1つ、爆撃について注意しておきたいことがあります。先ほど「活性状態に ある収束具/固定具は一種の二元生物として扱われる」と書いたことを思い出して 下さい。この考え方を応用すると「二元生物は常に爆撃の対象となりうる」という 結論にたどり着きます。 >>>>>[ちなみに、アストラル視覚を使っている奴も同じく爆撃対象となるんで気を つけましょう]<<<<< これはつまり、「出現体となった精霊」は爆撃の対象である、ということに他な りません。精霊のフォースが収束具のレーティングと同じ効果を持ち、爆撃の成功 率を下げることはできますが、フォースの低い精霊があなたのそばにいる時などは、 アストラル爆撃を食らう可能性があるということを忘れないで下さい。 実は裏技として、わざとフォースの低い精霊を呼び出しておいて、敵のそばで 「出現」させ、そこをターゲットとしてアストラル爆撃を行なう、という非常にエ グい方法もあります。 しかし、忘れないで下さい。自然精霊は貴方の援助者です。貴方は世界に対して の畏敬の念を忘れてはなりません。精霊は貴方の願いに応じてその力を貸してくれ ている仲間です。その仲間を見殺しにすることが果たして許されることでしょうか。 それは「知識と技術」だけをふりかざしてごう慢に世界を支配しようとしてるメイ ジたちの発想です。そんなことをした貴方に、精霊たちが再び力を貸してくれるな どと期待してよいものでしょうか? 7. 精霊が現れたら =================  ランの最中に敵対する勢力の精霊が貴方の行く手をはばむことは良くあります。 特にコーポレートの施設などに侵入する場合には、当然リモートサービスを命じら れた元素精霊(大抵火炎か大気)と遭遇することを想定しておくべきだ、と言って も過言ではありません。この時、シャーマンである貴方の仕事は何でしょうか?  アストラル空間の制空権を握るのは、魔法使いたる貴方の義務です。物理空間は サムライなどの凡俗な皆さんにお任せするとして、貴方はアストラルから妙な攻撃 を受けないように常に気を配らねばなりません。 1) 発見する   アストラル空間にいる存在を検知する最も簡単な方法は「アストラル視覚」を使   うことですが、これは前述した通り、いきなりアストラルからぶん殴られたりす   る可能性があることや、物理空間での行動に不利な修正がつくことを考えると、   あまりお薦め出来ません。大抵は低いフォースの精霊(Grimoire-II を導入する   なら Watcher が最適)を呼び出しておいて、「アストラルに怪しい存在が来たら   知らせて/攻撃して」という指示を与えておくのが常道です。ですが、自然精霊   は同一領域では複数は呼び出せませんから、この場合、精霊からの支援は諦める   必要があります。 2) 正体を見極める   精霊は大体出現体となった時点でその素性が明らかになります。特に元素精霊は   その姿からはっきりと分かります。精霊の力のうち、最も恐ろしいのはそれらが   持つ特殊能力です。幸いその素性が分かった時点でその精霊が持つ特殊能力を想   定し、それに対する対策を考え、かつ味方に警告を発しなければなりません。大   いなるアストラルの存在について無知な仲間を助けなければならないのです。あ   なたは出来る限り精霊の特殊能力の影響を受けないような方法を考えなければ   なりません。   3) 叩く   精霊がいることが判明したら、貴方は何をするべきでしょうか?本来は相手が敵   対的であるかどうかを判別しなければなりませんが、ランの最中にいきなり出現   した精霊が友好的であるというケースは極めて希であるため、今回は考慮しない   ことにします。   精霊を叩く方法はいくつかあります。   ・最も簡単な方法は、相手より大きなフォースを持った精霊同士による精霊戦闘   です。自然精霊は物理空間の相手に直接戦闘を行うことの出来ないものが多い   のですが、精霊戦闘は別です。精霊戦闘は(ダイスの結果にもよりますが)大   抵はフォースの大きな精霊が勝ちます。自分がいま召喚してある自然精霊の   フォースが相手より高ければ、それをそのままぶつけるのがかなり有効な手で   す。また、Grimoire-II を導入していればウォッチャーが使える筈です。   ウォッチャーを多数召喚して集団であたらせ、「格闘戦に味方」のボーナスを   狙うというのも手です。   ・もう1つの方法は、これは相手が出現体になっていないとちょっと使いにくい    方法ですが、呪文による直接攻撃です。大抵の精霊の出現体の Willpower は    そのフォースの値となります。自分の手持ちの呪文のフォースをよく考えた上    で、有効でありそうならやってみると良いでしょう。   ・次の方法はバニシングです。つまり精霊との一対一の勝負に持ち込み、敵の精    霊を追い返す技です。しかしこの方法を行うと、一切他の行動が取れなくな    り、貴方は完全に無防備な状態となります。また一時的ではありますが、    Magic 値の低下が起きる可能性があります。かなりリスクの高い方法ですの    で、まずアストラル的にこちらの方が数が多く、かつ物理的に自分が安全であ    るという条件が満たされない限り、この方法は取らない方が賢明です。   ・精霊に対して自分がアストラル投射を行い、アストラル戦闘に持ち込むという    手もあります。ですがこれはよほど相手のフォースが低くない限り止めておい    たいいでしょう。なぜなら、反撃によりダメージを受ける可能性が在る、自分    自身の肉体を無防備な状態に晒す、投射直後に動けない時間がある、などの欠    点があるためです。   ・コントロールコンテストを行うという手段もあるにはあります。しかしこれは    今まで私が経験して来たセッションでは一度も行われたことがありません。    ルールを観て頂ければお分かりになると思いますが、コントロールを奪う側が    あまりにも不利であるためです。失敗率が高すぎるのです。これはよほど彼我    の魔法能力に差があるとき以外には行うべきではありません。 8. 呪文の使い方を考えよう =========================  基本的には、シャーマンは自分のトーテムが得意としている分野の呪文を使うの が正しい姿勢です。なにせ貴方の半身がそうしろと言っている訳ですから。という わけで、貴方のトーテムと相談した上で、使えるようならそうした呪文をガンガン 使っていきましょう。終わり。  ....というのはちょっと置いといて。  新米のシャーマンは自分のトーテムのボーナスのある呪文の中でも効果の派手な ものに目が行きがちです。しかし、真に優れた魔法使いというのは、地味でも効果 の高い呪文をきちんと要所要所で使って、最大の効果を上げるものです。例えば、 貴方のトーテムが戦闘呪文にボーナスをくれるとしましょう。確かにマナボルト6 は強力です。しかしそれはキマればの話。サムライをデザインしたことがあれば解 ると思いますが、大抵のサムライの意志力は5未満ということはありません。とい うよりほとんど6であると思っていいでしょう。そうなるとこの呪文も途端にキマ り難くなってしまいます。  しかし同じ戦闘呪文でも「衝撃(Ram)」を取るなど、ちょっとヒネっておくと、車 両を破壊するなどの他に、追い詰められた時に脱出路を作る等の方法で使うことも 出来ます。要は応用の効くような呪文を使うようにしろという事です。  操作呪文なら「火炎爆破」や「電撃」を取るのもそれはそれでいいのですが、 「光」や「影」などで、銃撃戦の時に味方の視界修正をより良くする/敵の視界修正 を悪くする方が実際には効果が高いはずです(状況にもよりますが)。あるいは 「人体浮遊」で相手を持ち上げて、高いところから落とす、等の技を使いこなす者 もいます。障壁や生体障壁は物理攻撃や魔法攻撃をやりにくくする上に、足場とし ての使い方もあります。  幻覚呪文にも様々なものがありますが、中でも「透明化」「完全透明化」は非常 に使い易いものの一つです。それ以外だと「混沌」が便利でしょう。これは抵抗が 知力ベースで行われる為で、サムライなどはマナスペルに抵抗するために意志力を 上げている者が多いのですが、一方知性はというとそれほど高くなかったりするか らです。  身体呪文だと、大抵「負傷治癒」と「負傷処置」を取ることが多いでしょうが、 対サムライ攻撃用として「魅力減退 -1」を取っておくという手もあります。これは サムライの魅力値が1になることが多いのを逆手に取った技の一つですが、結構ド レインが軽いのが魅力です。魅力能力値がゼロになると、基本的に行動不能に陥り ます。 9. 複数の精霊を呼び出す ======================= Q: 私は今、あるビルの中にいます。そこで住居精霊を呼び出しました。私は家屋 君に人探しをお願いして、そのままビルの外に出て、道路の上で都市精霊を呼 びだそうと思います。都市君は来てくれるでしょうか? また家屋君はどうなる のでしょうか? これは結構頻出する質問で、これまで多くの議論の対象となっていました。しか し最近出たサプリメント AWAKENINGS で明確な解答が与えられました。 A: 都市君は来る。家屋君は貴方の願いをできる限り満たそうとして、時間が切れ るかサービスが切れるかするまで働き続ける。貴方は都市君に別の仕事をお願 いしてからビルの中に戻り、家屋君に捜索結果を尋ねることができる。 結論から言えば、シャーマンは同時に複数の精霊を使役することができます。た だし、「1つの領域に1つの精霊」という制限があり、あっちこっちの家の中に1 体づつ精霊を配置するということはできません。精霊は貴方がいなくても、貴方が 最後に彼に頼んだことをできるだけ実施しようと努力してくれます(どこまで「賢 く」こなすかはそのフォース次第ですが)。探索や守護、隠蔽などの継続性の高い 作業などはこの用件にぴったりと言えるでしょう。 これにより様々な応用が考えられます。典型的な例として、アストラル投射中の 肉体を守っておいて貰う例を挙げておきましょう。 アストラル投射する前に、まず投射して行きたい場所の領域にいる精霊をまず召 喚しておきます。そして彼にはそこで待っていて貰って、別の領域に行きます。 そこで別の精霊を呼び出して、「僕はこれからアストラル投射してくるから、戻っ てくるまで肉体を隠蔽しておいてくれないか」とお願いして、おもむろにアストラ ル投射をし、目的地で待ってて貰った精霊の支援を受けつつランをする。 また、トラップがわりのこんなやりかたもあります。 貴方はビルに立てこもることにした。まずビルに入る前、入口の道路のところで 都市精霊を呼び出しておきます。貴方は都市君に「このビルの入口を通ろうとする 奴がいたら、ちょっとビビらして(恐怖)やってくれないか」とお願いしておきます。 その後、おもむろにビルの中に入り、そこで住居精霊を召喚し、敵の襲撃に備えま す。 10. パワーは急に使えない ========================  アストラル空間にいる自然精霊は、そのパワーを自分の召喚者以外に及ぼす事が 出来ません。それを行うためには物理空間に「出現」しなければならないのです。 また、精霊(実際には精霊に限らず、魔法使いを含む全ての存在)はアストラル空 間から物理空間へ移行した場合、その存在は20フェイズの間一切の行動を取るこ とが出来ません。またその逆を行った場合にも10フェイズの行動不能時間が存在 します。  つまり、急に出現した敵に対抗するべく「あいつらを”混乱”させてくれっ」と 精霊にお願いしたところで、もし貴方の援護者たる自然精霊がアストラル空間にい たら、いかに偉大なる自然の代弁者たる精霊であってもそれはすぐには実行できな いということになります。  貴方がもし、自分以外の誰かに対して自然精霊の恩恵/呪いを与えたいと思うのな ら、あらかじめ自然精霊に「出現」するようお願いしておくのを忘れない事です。 ############################################################################   参考文献 ############################################################################ Shadowrun Second Edition by Jordan Weisman, Bob Charrette, Tom Dowd, L.Ross Babcock III Sam Lewis, Dave Wylie ISBN 1-55560-196-0 FASA Corporation (7900) The Grimoire Second Edition by Paul Hume ISBN 1-55560-190-1 FASA Corporation (7903) AWAKENINGS by Stephen Kenson ISBN 1-55560-273-8 FASA Corporation (7120) シャドウラン[ルールブック] 訳:江川晃/グループSNE ISBN 4-8291-7239-8 富士見書房 シャーマンへの道/The Way of the Shaman Michael Harner著, 高岡よし子訳, 吉福伸逸監修   ISBN 4-89203-157-7 平河出版社 アメリカ・インディアン〜奪われた大地/La Terre des Peaux-Rouges (「知の再発見」双書20) Philippe Jacquin著, 森夏樹訳, 富田虎男監修 ISBN 4-422-21070-X 創元社 [EOF]