シャドウラン(Shadowrun) の魅力

>走れ、さもなきゃ、やられる。常識だろ…
>Executor(12:36:25/11-02-52)

「世界は変化した。<覚醒>したという者もいる。」
 このフレーズでスタートするサイバーパンクRPG、それがシャドウランだ。

 シャドウランの舞台となる2060年代の未来、通称「第六世界」は魔法が復活し、その一方で科学技術も(特に人体改造の分野で)進歩した世界である。伝承の中にのみ存在した生物が本来の姿を取り戻し、祈祷師の呪術が力を持ち、世界的規模のコンピュータ・ネットワークを仮想現実として操作する技術が産まれ、そして肉体を限界まで改造した剃刀の異名を取る連中がストリートを駆け抜ける。強大な力を持った巨大企業が世界に影を落とし、彼らが自らの手を汚したくない時にシャドウランナー──いかなるデータベース上にも記載されず“存在していない”者たち、非合法な仕事を静かにこなすことを商売とするプロフェッショナルたちが必要とされる。

>よく頑張ってまとめました。パチパチ
>出琉(22:16:30/04-26-55)

>ずいぶんと抜け落ちがあるぜ。誤解も出そうだな
>Mask.J(08:06:49/07-24-55)

 この世界の特徴は現代社会(特にアメリカ)の鏡像であるということ。
 人種差別がエルフやトロールといったメタヒューマン種族差別に置き換えられ、環境問題はそのままシャーマンの自然崇拝や汚染精霊(追加サプリメントで紹介)になり、企業支配は強大な経済力と軍事力を持ったメガ・コーポとして表される。さらに、ネイティブ・アメリカン(インディアン)差別・支配問題はネイティブ・アメリカン諸国の独立、マスコミ報道やエンターテイメントはそのまま巨大メディア、テロリズムはネオ・アナーキズム(自由市場原理を重視する思想。巨大企業とは根本で対立する)、カルト問題は表向きは慈善団体であるが実体は汚染精霊を崇める集団Universal Brotherhood、麻薬はBTL(Better Than Life:人生より素晴らしいもの)と呼ばれる電脳麻薬、などというように種々の問題が形を変えて、あるいはそのままの形で世界の中に取り込まれている。“Germany Sourcebook”、アメリカでも出版されたドイツ製サプリメントでは、宗教さえも扱っている。
 しかも、そういった問題に優等生的な答えを与えるのではなく、その真っ只中、理屈の通じない環境の中にすべてを放り込んでいく。

>Shadowrun にタブーはないじぇ
>Dec(23:29:10/12-16-55)

 シビアな社会を舞台に、ランナーたちはプロフェッショナルとして生き抜いていこうとする。野心を満足させるため、より良い生活を送るため、理想を現実にするため、復讐を遂げるため、死に場所を探すため、ただ日々を生きるために。そこには正義だとか思いやりだとか情けだとかいったヤワな感情は存在しない。そんなのを持っていれば、それに振り回され自分の首を絞めるのが落ちだ。

>ライフスタイルも友人も“買う”世界だからねぇ
>flashLeft(22:02:02/01-30-96)

>助けを求める女性に“タダ同然で”手を差し伸べるような甘ちゃんはランナーとわ言わねーよ
>wade(00:00:00/00-00-00)

 ルールの話もしよう。
 シャドウランの判定方法はシンプルである。決まった個数のサイコロを振り、目標値以上の数字が出たサイコロの個数が成功の度合である。基本的には足し算をする必要さえない。『以上』という概念がわかればいい。
 戦闘ルールもこれを基本に、攻撃側と防御側で判定をし、攻撃側が成功したサイコロの個数で同数になるか超えれば、攻撃は命中となるというのが基本である。当然、成功数が多ければ多いほど有利な結果になる。この簡単な基本部分に、種々の行動や状況の修正を加えることで、単純かつ必要な部分では詳細という戦闘が表現される。
 他のルールも、ゲームのルールとしての構造のシンプルさを失わないようにしながら、簡易ルールになってしまわないような本格的な表現力も持ち合わせるようになっている。

>単純、かつ詳細。不必要なものを切り捨るやり方がとてもうまい。『突貫と抽出』シナリオと呼ばれる単純な襲撃シナリオでも十分に面白いのがいい
>JM(22:26:57/03-05-95)

 シャドウランというと「ファンタジー+サイバーパンク」というイメージが前面に出されているが、実はほとんど“ファンタジー”ではない。
 たしかに魔法もエルフも出てくる。だが、少なくともトールキンみたいなファンタジーとはまったく異なっている。魔法はネイティブ・アメリカンのシャーマニズムを題材とし、エルフやドワーフやトロールについては人種差別問題にまで踏み込んでいく。結局何のためにこれらを出したかと言えば、「カッコいい世界を作るため」である。
 それも正義のヒーローではなく、ピカレスク的なカッコよさ。音楽で言うなら(32ビートぐらいの)ロック、色で言うなら黒と銀。技術の進歩が人間の存在すら変えつつあるサイバーパンク世界にあって、その体制からもはみ出してしまった半ばクレイジーなぐらい On the Edge な連中がプレイヤーキャラクター。そして彼らのハードでカッコいい生き方を楽しむのがシャドウランなのだ。
 シャドウランは戦闘中心のRPGである。極めてシビアでデッドリー、しかもカッコいい戦闘である。結構よく死ぬ。それがシャドウランの世界だと言えるだろう。

>大丈夫かい? 人の受け売りで言葉が浮いてるぜ、きゃははは……
>DAM(23:05:16/02-21-56)

>“闇と暴力の美学”。シャドウランの魅力をこう表現したのがいたな
>chuckle(23:31:01/08-28-55)

The Neo-Anarchists' Guide for Japanese Children

 シャドウランで何が重要か。
 色々あるが、一番はスタイルにこだわること。
 こう書くと格好つけることだと思うかもしれないが、そうではない。自分のやり方を確立していること、ストリートの中で生き抜いてきた自身の生き方、それをはっきりさせることである。だからといって別に悲壮感を無理に出す必要もない。
 難しいと思うかもしれないが、特別難しいことでもない。結局はアメリカ製のRPGである。参考にするものは周りにたくさん転がっている。映画、特に現代ものは参考になるものが多い。ストリートのにおいのようなものをわずかでも感じれれば、生きたプレイになるだろう。
 小物にこだわる。言葉にこだわる。服装にこだわる。簡単なアプローチはこの辺りであろう。高級品にこだわるのか、一番の安物にこだわるのか、いかにも普通の物にこだわるのか。どれでもいい。やってみてはどうだろう。
 筆者は日頃、サイバーパンクというのは、発達した科学技術の中で生きる人間の、実に“格好悪い”ハードボイルド・ストーリーだと言っている。ストリートの中で生きることを最優先に考えなければいけない環境下にある人間をロールプレイするのだ。

>だからといって、単なる殺人鬼や偏執狂のような奴らのことじゃないじぇ。言っとかないと、よく間違える素人がいるからな
>Narr(22:04:05/03-10-56)

>ストリートに染まって、落ちていくだけならば、誰にでも出来る。
 命懸けで自分のスタイルを貫くから、そいつはヒーローなのさ
>vicon(01:30:25/08-06-53)

>ヒーローって奴は長生きしないんだぜ
>ZaI(08:47:00/08-06-53)

 そして、マスターへ。
 キャラクターは殺そう。
 格好良く演出してやる必要もない。
 泥塗れになって、生ゴミの散らばる薄汚い路地に転がる。そういった死に方でいいのだ。
 ドジを踏んだ奴に救いの手は(高価な対価を払わない限り)差し伸べられない。
 何も考えずに巨大企業にケンカを売っておいて、のうのうと生活していられるほど世の中は甘くないし、ストリートは優しくない。
 もし、思い違いをしている奴がいれば、即座に自分の思い違いを教えられることになるだろう。最も効果的で後を引かない方法で。

 要するに普通に現代ものをプレイする感覚でいい。ただ、人の良さとか優しさとか、そういった理想上のものを理想だと明確にしておけばいい(ここを浪花節にしてしまうとサイバーパンク的なものがどこかに行ってしまう)。もちろん理想を追い求めるのは自由だ。多くの障害がある中で理想を守り通すのは格好のいいことだろう。
 シャドウランは基本ルールブックだけでも、プレイスタイルのアイデアも豊富に提供されているし(巻頭の "ROLEPLAYING SHADOWRUN"、アーキタイプやコンタクトの解説、世界設定(巻頭近くの歴史と巻末のシアトル案内)、短編小説などをすべて読めば、ロールプレイには十分すぎるくらいの、かなりの情報量だ)、かなりプレイは簡単だとは思うのだが、ゲームの中では悪をバッタバッタとなぎ倒す正義の味方だけをやっていたいという人にだけは向かないRPGである。結果的に正義の味方になって勝利を得ることもあるが、あくまで“結果的に”である。そういうプレイ“だけ”をしたいのなら別のRPGをやることをお薦めする。
 だが、そうでないならば、ぜひ一度シャドウランに触れてみて欲しい。おそらく、他のRPGでは感じられなかった新しい何らかの面白さを感じ取れるはずである。

>これで終わりかい?
>Mask.J(22:40:59/03-11-56)

武藤 潤 (Jun MUTO)

(知人の文書を流用したり、参考にさせてもらっています。特に VICON さんと Genich! さんの文章を多々利用させていただいております。文末ではありますが、この場を借りて感謝を)