Kult (2nd Ed.) のルール(2) : メンタルバランス、狂気

(この記事は Kult Second Edition (英語版第二版)をもとに書かれていますので、現在の KULT: Divinity Lost (第四版)のルールとは大きく異なります)

(メンタルバランス/:
 「美点/欠点 (Advantages / Disadvantages)」のポイント合計が「メンタルバランス (Mental balance)」となるわけですが、Advantage を「美点」と訳した理由について少し説明をします。
 「美点 (Advantages)」に挙げられている項目の中には、「正直」や「気前がいい」など、他の RPG では「Disadvantages」に分類されかねない、キャラクターにとって「損」な項目が見られます。一方で、「欠点 (Disadvantages)」の中には、「性的魅力」というのがあります。
 ここでルールブックのずっと後のほう (THE TRUTH パートの中の The Awakening) を見ると、「メンタルバランス」が正の値をとっていくことを「The light road」、負の値をとっていくことを「The dark road」と表現しています。つまり、メンタルバランスは正気/狂気や善/悪というものを表すよりも、「光」と「闇」、つまり聖/邪とでも表現すべきものを表すことに重点を置いているわけです。
 こう言えば、もうお分かりでしょう。「Advantage」は「徳 (主にキリスト教的価値観に基づくもの)」を指し、「Disadvantage」は「けがれ/不徳 (同上)」とでも言うべきものを指すということになります。(美点「魔術の才能」など、若干の例外があります)
 また、メンタルバランスは通常の人間の枠から外れていく度合も同時に表し、これはメンタルバランスの「絶対値」で判断します。0がもっとも「普通の人」ということになります。

 キャラクター作成時のメンタルバランスは、-25より低くしないほうが良いとルールブックに書いてあります (プラスのほうも同様に、+25より高くすることは避けたほうが良いでしょう)。
 メンタルバランスの増減は、恐怖判定に大失敗した場合に「欠点」が増えることでマイナスされる他、シナリオ終了時に得られる経験点を消費することで増減できます (メンタルバランスの絶対値が増えるように変化させるほうが、絶対値を小さくするよりも少ない経験点で済みます)。このため、おそらく、1シナリオでのメンタルバランスの増減幅は、-10から+5くらいの間に収まるでしょう。
(ところで、ルールブックを見ると、THE LIE パートの中にプレイヤー向けの情報として、-100から+100までの解説が載っています。さらに THE TRUTH パートには、-500から+500までの表が…(^^;))

(メンタルバランスの効果/:
 メンタルバランスの値が、正または負に大きく傾くと、キャラクターに影響を及ぼすようになります。プレイヤー向け情報である THE LIE パートから、-100~+100の段階の解説を要約して紹介します。
 マイナスに傾いた場合、最初のうちは、その負のオーラのために動物や子供が嫌がって近づいてこなくなる程度ですが、だんだんと精神の病が傍目にもわかるようになります。さらに進行すると、常に人間関係を壊すように行動しはじめる他、恐怖などで大きなショックを受けると「姿が変わってしまう」ようになります。そして、「欠点」を抑えるすべを失っていき、自身の影 (この場合は「光」の面ですが) が実体化し、キャラクターを付け狙うようになります。
 プラスの場合、子供や動物に好かれるようになるところから始まり、高い共感能力 (エンパシー) を発揮しはじめ、人々が安らぎを求めて周りに集まるようになります。さらに進行すれば、メンタルバランスが負の存在があなたを避けるようになります。そして、「欠点」が失われていき、どんな状況下でも攻撃的な行動を取ることが一切できなくなります。また、マイナスの場合と同様に、自身の影 (「闇」の面) が実体化し、キャラクターと対面することになります。

(恐怖/:
 Kult もホラー RPG のはしくれですから、キャラクターが恐ろしい光景を目にしたりすると、恐怖判定が行われます。(大怪我をしたり、仲間が吹っ飛ばされたりするだけで恐怖判定がありますので、一般的なホラー RPG より厳しいかも) 代わりに、精神にショックを与えるようなことに遭っても、そういう状況に慣れていたり、事前に予測していたりすると、恐怖判定の Ego 能力値ロールにボーナスが付いたりします。
 判定に失敗すると、恐怖のあまり錯乱状態に陥ります。クトゥルフの呼び声の一次的発狂のようなものだと思えば、間違いありません。叫び声を上げたり、身を縮こまらせて動かなくなったりなど、通常はランダムに状態を決めます。

 メンタルバランスがある程度以上マイナスに傾いているキャラクターは、その「欠点」の内容に基づいて、錯乱の状態に影響がでます。「欠点」のコントロールができなくなるのです。(「欠点」による影響については、各「欠点」ごとの例がルールブックにあります)
 また、メンタルバランスが大きくマイナスに傾いたキャラクターは、恐慌に陥った際に、一時的、あるいは半永久的に自らの姿を変えてしまう可能性があります。恐怖の刺激を受けた狂気が、現実という虚構の姿を変えるので、異形と呼ばれるような変化が肉体に起きることになります。

(幻影の向こう/:
 さて、紹介の最初 (Kult 世界の概観) に書いたように、Kult の世界の現実は、実際には幻影にすぎません。そして、精神のバランスが崩れた人間は、その虚構を見破ってしまう可能性があります。
 恐ろしい事態に直面した場合、メンタルバランスの絶対値をもとに、幻影を見破る確率がキャラクターに与えられます。
 これに成功すれば、虚構を見破ったことになり、例えば、恐怖の原因となる「もの」の真の姿を見ることができたりします。

 しかし、これは新たな恐怖に直面することに他なりません。真の世界に触れることは、自らの恐怖に力を与え、解き放つことにもなります。
 幻影を見破った際には、新たに Ego 判定を行ないます。キャラクターが抱える悪夢や狂気や幻想が実体化し (それは人間の姿であったり、モンスターであったり、現実を変化させることであったりします)、キャラクターに襲いかかる可能性があるのです。

武藤 潤 (Jun MUTO)

(ゲーム製作者たちや当ページの筆者は、宗教的な信条を表明したり、読者に信条を伝えようとしているわけではないことを付記しておきたい。これは単に、このロールプレイングゲームの設定にすぎないのである。)